第10章 悪夢の棲む家
和室を埋め尽くすような機材の山。
自分が見ても分からないような機材もあり、翠は双子たちへと視線を向けた。
「もっと広い部屋を用意したほうがよかったかしら」
「そんなにカメラが多くないから大丈夫ですよ。予備調査をするんで、おうちの中を案内していただけますか」
「ええ……」
翠は双子を連れて、まず居間へと向かった。
「ここが居間です」
双子は辺りを見渡してから、結衣は気温計を棚の上に置く。
そして双子達は部屋をまた見渡してメジャーを手に取りながら、辺りを歩き回る。
「何をしてるのって訊いてもいい?」
「部屋の気温とサイズを計るんです」
「おうちの図面が無いということだったので、図面を作らないといけないので」
「気温も関係あるの?」
「心霊的な現象が起こっている場所では、しばしば気温が下がるんです。まあ、どの部屋を重点的に調べるのかの計画を立てる指標にするだけなんですけど」
「正直言ってずいぶんイメージと違うわ。あれだけの機材を使うなんて意外だった」
「「ですよねー」」
結衣は初めてナルの仕事を手伝った事を思い出した。
自分も心霊調査でこんだけの機材を使うなんて思ってもいなかったし、イメージとも違ったのをよく覚えている。
そして調査をするようになってからよく依頼人から驚かれたものだ。
「ウチの場合、除霊とかもしますけど第一目的は心霊現象の調査ってやつでして」
「機材の半分は資料にするためのもので、ここで何が起こっているのか調べるんですよ。あとの半分は幽霊とかそういう調査に使うものです」
「いろんな機材で調べてみて、幽霊がどんなものだかを研究しようという事──らしいです」
「らしい?」
「いやーあたし達ミソッカスなんで、ややこしい事はさっぱり。いまだにあの機材の半分はなんだかなーなんです」
「ナルもリンさんも必要以上は説明してくれないし、あたし達に触らせないんで」
これでもリンは双子達に少しだけ説明してくれるようになったものだ。
だがナルは『説明が必要か?』と言いたげにして、説明なんてしないのである。
「じゃあ、お祓いはまだしないのね?」
「除霊まではウンザリするほど長い道のりがあるんです、
すみません」
「早めに解決出来るように頑張りますので」
「ううん。宜しくお願いします」