第9章 忘れられた子どもたち
「それに?」
「ぼーさん、あたしのこと妹程度にしか思ってないよ」
麻衣と同じ妹のようにしか思っていない。
吉見家の時に『父親でも兄でもなれるし、なんでもなれる』と言われたことはあるし、それに扱いがそういう扱いなのだ。
だが時折、麻衣とは違う扱いをされるのは知ってる。
よく抱き締めてくれるけど、それもスキンシップがあたしには激しいだけかもしれない。
(わかんないけど……たぶん……)
妹以上の扱いはされてる可能性もある。
だがよく分からないのだ。
(だって異性のように接してくると思えば、兄のように接してくる時もある。分かんないよ……)
頬が熱くなるのを感じながらあたしは眉を寄せる。
すると綾子が溜息をついた。
「そんなの分かんないでしょ。それに坊主の奴、あんたを特別な扱いをしてるわよ」
「……え?」
「たぶん坊主も…………まあ、これは言わないでおきましょうかねぇ」
「へ?」
「まあ、告白するかはどうからアンタの勝手よね。でもするなら応援するわよ?」
告白……その言葉に顔を赤くさせる。
ぼーさんはこんな子供の告白を受け取ってくれるだろうか。
そう思いながら顔を俯かせた。
「それより結衣。アンタ、麻衣探してきてよ」
「麻衣?」
「夕飯の手伝いぐらいさせなきゃ。働かぬもの食うべからずよ」
「……はあい。綾子ママ」
「誰がママよ!あんた見たいな子を産んだ覚えはないわよ!早く行きなさい」
そういう所がママなんだ。
なんて思いながらあたしは麻衣を探す為にフラフラとしながら森林へと足を踏み込んだ。
告白、告白。
その言葉が脳裏に浮かんで回っていて、なかなか顔の暑さが消えてくれない。
「簡単なこと言ってくれるけどさぁ……告白なんて勇気がいるもんなんだよぉ」
なんて思いながら歩いていれば、ふと話し声が聞こえてくるのに気が付いた。
(麻衣の声と……ナル?)
草を踏みながら木の影から覗く。
するとそこには木を隔てて麻衣とナルが気に寄り添って話しているのが見えた。
(あら、あらあら……)
良い所を壊すのは辞めておこう。
帰るかな……と思ったが、帰ったら綾子がなんで麻衣がいないのかと怒りそうだ。
でも邪魔するのは嫌だ。
馬に蹴られるのはゴメンだと思いながら、あたしはその場か去ることにした。