第9章 忘れられた子どもたち
「おれが秘密にしてると、嫌なのか?」
顔を覗き込むように聞かれて、思わず顔を引っ込ませる。
彼の瞳の奥に意地悪な色が見えてムスッとすれば、彼はクスクスと笑う。
「ぼーさんのそーいうところ、嫌い」
「……ふーん?」
「意地悪」
「意地悪なおれは嫌いなのか?」
「意地悪されていい気分にはならないよ」
頬を膨らませていれば、彼は目を細め微かに口を釣り上げてからあたしの頬に手を這わす。
その感触に驚いて肩を跳ねさせていれば、ぼーさんの顔が少し近づいてくる。
(な、なに……!?)
近い、本当に近い距離にぼーさんの顔がある。
驚きと恥ずかしかで固まっていた時であった。
「ちょっと、クソ坊主!!」
後ろからこの場を切り裂くような声が聞こえた。
驚いてそちらを振り向くと綾子が仁王立ちして、腰に手を当てて立っている。
「あ、綾子……」
「暇なら買い出し行ってきてよ。夕飯の材料足りないから」
「……人使いが荒い」
「うるさいわね。さっさと行ってきて!」
「へえへえ。じゃあ、またあとでな結衣」
ポンッと頭を軽く撫でたぼーさんはあたしに背を向けて歩き出した。
そんな彼を見ていればいつの間にか綾子が隣に立っていて、片方の眉を少し上げながらあたしを見ている。
「な、なに……?」
「アンタ……坊主のこと好きでしょ」
「……はい!?」
「やっぱりねぇ」
納得したかのように綾子は頷く。
あたしは目を開かせていて、なんで綾子にバレたんだと慌てふためいた。
「あんたを見てれば分かるわよ。坊主に一番懐いているのアンタだし……まあ、顔を赤くさせてる時もある。分かりやすいわねぇ」
「うそ!?そんなに!?」
「ちなみに、安原くんにもバレてると思うわよ。あの少年が分からないわけないしね」
「うそぉ!?」
ニヤリと笑う安原さんの顔が思い浮かんだ。
「趣味が悪いわねぇ、アンタ」
「麻衣と真砂子にも言われた……」
「……告白はしないの?」
「はあ!?」
突然の言葉にあたしは叫んでしまう。
そして辺りに人がいないかとキョロキョロしてから、誰もいないのを確認した。
「し、しないよ!た、たぶん……」
「なんで?」
「告白して『そう?』とか言われて終わったら虚しいじゃん……。それに……」