第9章 忘れられた子どもたち
「うん……今までナルが大きい事件の依頼を断る度になんで?って思ってたけど、当たり前だよね」
あたしは少し眉を下げてから項垂れる。
ナルが事件の依頼を断る度に相手が可哀想とか、もう少し考えてあげなよと言ったことを後悔した。
ナルにはナルの事情があった。
知らなかっとはいえ、随分酷言い方をした。
「それに……」
ふと、リンさんが言葉を発する。
だが何かを言うとしてそれを辞めた。
「──いえ。とにかく、くれぐれもよろしくお願いします」
話が終わり、リンさんはバンガローを出ていく。
皆はそれぞれバンガローを出たり、散歩に行くと言ったりとしてバラバラになった。
「……まさか、ナルがデイヴィス博士だっとはなぁ」
ポツリと呟きながらバンガローを出る。
ふらふらと歩いていれば、前から見慣れた金髪が見えて立ち止まる。
「よお、結衣。こんな暑いのにどこ行くんだ?」
「散歩〜。そういうぼーさんはなにしてんの?」
「んー……ちょっと考え事?」
「ナルの正体が大ファンのデイヴィス博士について考えてるの?」
「やめろ!」
顔を真っ赤にさせるぼーさんにあたしは可笑しくなって笑ってしまった。
暫くはぼーさんはこの話で弄られるだろうなぁと思っていれば、彼は溜息を吐き出していた。
それにしても……とぼーさんを見る。
彼は本当に頭が良いというか、推理力があるもんだと思った。
「それにしても凄いね、ぼーさん。ちょっとの違和感からナルをデイヴィス博士だって分かるなんて」
「頭のデキがいいんで」
「そんなこと言ってると、ナルみたいになるよ。……なんで、男三人でコソコソ話してたの?あたし達にも話してくれても良かったのに」
思ったより不貞腐れた言い方になってしまった。
そんなあたしにぼーさんは少しだけ目を見張り、目を細めながら微笑んだ。
その微笑み方が優しいというな大人っぽくて、自分が子供だと思わされてる様な気がした。
「ちゃんと話そうとはしたけど、あの時はまだ確信が持ててない時だったからな」
「ふーん……」
「なあに、拗ねてんの?」
「うるさい!」
ぼーさんは笑いながらあたしの頭をぐしゃぐしゃに撫でた。
その手を払おうとして手を伸ばせば、その手は簡単に捕まってしまう。