第9章 忘れられた子どもたち
長い長い沈黙。
あたしはその沈黙が息苦しくて、息を何度も何度も飲んでいた時だった。
「あ」
突然安原さんが言葉を発して、あたし達は驚いてしまった。
「ど、どうした少年」
「あのーぼく素敵な事実に気がついちゃんたんですけど。滝川さんってデイヴィス博士に傾倒してるんですよね。ってことはつまり」
「え」
「渋谷さんの大ファンってことじゃないですかあ」
安原さんの言葉にぼーさんが叫んだ。
だが安原さんの言う通りであり、ナルはデイヴィス博士なのだからぼーさんはナルの大ファンってことである。
あたし達はニヤリと笑う。
それを見てぼーさんは青ざめた表情を浮かべる。
「あーっ、そっかあ!」
「ぼーさんデイヴィス博士の大ファンだよね!そーいえば!」
「良かったじゃない。いっぱいお話できてー」
「博士にもファンだってバレてるよー。目の前で褒めまくってたもんね!」
「サイン貰わないんですか?」
「やめて!考えないようにしてたんだから!」
ぼーさんは顔を真っ赤にさせていた。
それがおかしくてあたし達はケラケラと笑い飛ばす。
「あっ、そっそういやリン!」
恥ずかしさからぼーさんは逃げるようにリンさんを見た。
「あの例のビデオだけどさ!実験の!あれを撮影したときにはナル坊は倒れなかったのかね?五十キロのものを吹き飛ばすといやぁ、相当な消耗だろーに」
「以前はそんなに消耗する必要がなかったんです。ユージンがアンプリファイアの働きをしていたので」
「あんぷりふぁいあ……?」
「──なんだそりゃ」
「わたしにもよくは……ただ、ナルが小さな気をジーンにトスするとジーンがそれを増幅して送り返す。そういう現象だったようです。何度もトスを繰り返すうちに気が成長していく。それでたいして消耗する必要がなかったようです」
「……ふーん?」
よく分かるような分からないような……。
だが結局はお兄さんがいたからナルは倒れることはなかった……ということだろう。
「実際のよく分からないんです。ナルはあまりサイ能力の実験をしなかったので。実験したところで破格すぎて分析できないところがありましたし。本人もあまりサイ能力研究には興味がなかったようです」
「へええ」