第9章 忘れられた子どもたち
「なんにしてもスッキリしたわ。これでイギリスでもどこでも勝手に帰ってちょうだいってなもんよ。結構やるじゃない、破戒僧」
「おれの頭はお前のと違って飾りじゃないの」
それにしてもぼーさんは凄いものだ。
何時もはおちゃらけているのに、推理力が高いというか、よくここまで分かったものだと関心してしまう。
あたしじゃ分からなかった。
ぼーさんがいなけりゃ、あたし達は今もナルの正体を知らずにいただろう。
「滝川さんは見てないようで結構細かいとこまで見てますからねぇ。最初にこれを言い出した時は暑さでボケたのかと思いましたが」
「三人でツルんでなーんかヒソヒソやってると思ったら、こういう話をしてたんだなー?」
「なんか、モヤモヤしてたのが無くなったや……色々」
あたしは何度目か知らないが溜息を零す。
「ヒマで他にする事がなかったんだよ。まあ実を言うと『おや』と思ったのはこないだナル坊が倒れてからさ。ほら、どえらい気功を見せてくれたろーが?」
「うん」
「おれも気功についてよく知らねーが、あれが気功としても非常識なのはわからあ。スタイルも気功にしちゃ変わってる」
「……うん。似てるけど違うもんだってリンさんが言ってたよね」
「んで、ありゃPKなんじゃねえかと思ったわけよ。もともと気功=PK説ってのはあるわけだし。しかしPKにしろなんにしろありゃあ破格だ。そう思った時だな、破格のPKっつーので博士のことを思い出したわけ」
「なるほど……」
「考えてみると当てはまることが多いんだよな。たとえばスプーン曲げ。おれたちが見たのはトリック。使ったやつだったが、結衣と麻衣が見た時にはナル坊はスプーンをちぎってる。それが本当だとすると立派なPKだ」
あたしは湯浅高校のことを思い出した。
笠井さんと会った時に、ナルは見事にスプーンをちぎっていたがあれがPKなのか……とあたしは納得する。
じゃなきゃあんなの常人にはできない。
「しかもナル坊は情報を集めるのが上手かったりするんだな。妙に感が冴えてたり。ほらあの人形の事件のとき──」
「ミニー?」
「ああ、森下家の……」
「そうそう。あの時もスパッと人形には関係ないなんて言ってただろ?」
そういえば……とまた思い出す。
ナルはあの時スパッと言い切ってたなと。