第9章 忘れられた子どもたち
「それだと番号を載せてなきゃ調べようがないだろ。もしもしだ。ナルが個人的な電話番号を持っていないとしたら?たとえば呼び出しや共同の電話しかないとかさ」
「それって下宿かなんか?」
「そーゆートコに住んでるナルが想像できない……」
「あたしも想像できない……」
ナルのような性格が下宿に住んでいるイメージは完全にできないものだ。
「まあな。それはともかく、電話をかけて事情を知らない家族なり大家なりが出たりしたらマズイよな。プロフィールを隠したい人間としてはさ」
「出た人がうっかり喋っちゃうかもしれないもんね」
「だろ?もっとも、周りの人間に口止めする手もあるわけだがどうやらこいつはそれをしていない。というかできない事情があるから番号を教えられないんだとみたね」
「だったら個人の電話を引けばいいじゃない。番号を隠すよりよっぽど自然でしょ。ナルは収入だってあるんだから、出来なくはないだろうし」
「家族か大家さんがダメって言ってるんじゃないの?」
「それで番号を言わない……とか?」
「家族が反対してる可能性は低いな」
「どうしてー?」
「おいおい。ナル坊は未成年だぞ?何をするにも保護者の同意が必要なはずだろ。しかも事務所の責任者として堂々と顔出しもしてる。──ってことは、ナルのやってる事に少なくとも親が協力が黙認していないはずないんだ。だったら電話ぐらい引かせてくれそうなもんだろ?」
「そっかー……」
ナルは未成年。
確かに親の許可がないと色々出来ないし、まずSPRの所長なんて出来ないはず。
でも出来ているということは親が許可しているのだから、ぼーさんの言う通り電話ぐらい許可しそうなものだ。
「──あれ?でもそれならプロフィール隠しだって協力してくれそうだよね。じゃ、大家さんがダメって?」
「可能性はあるが、おれの考えはちょっと違うな。家族の反対がないのに電話を引けないってことは、ナルの住んでるところは個人の裁量で出来ることにある程度制約があるんだと思う。つまり──賃貸住宅、もしくはそれに類する場所で大家。抱き込みにくく、かつ個人的に電話を引きにくい場所ってわけだ」
「ええー?そんなとこある!?」
「どんな場所さ!そーいうところって!」
あたしと麻衣の言葉に、ぼーさんはニヤーと笑う。