第9章 忘れられた子どもたち
「野次馬根性って──なにそれバッカじゃないの?どうして純粋な好意を受け取れないわけ?だいたいね、みんながここにいるのはなんでだと思う?あんたが倒れて入院したから──そんで心配だったからなんだよ?それを好意って受け取れないならあんたは馬鹿だ!」
「好意をねだった覚えはないが」
「勿論そんなの一方的な好意だよ!でもね、他人に好意を向けられた時にはそれなりの態度ってもんがあるんじゃないの!?ナルは用事が済んだらさっさとバイバイしたいんだろうけど、最後ぐらい誠意ってもんを見せたらどうよ!」
ノンブレスで言い続けた麻衣は息切れしていた。
興奮しているのか息も荒く、あたしはそんな麻衣に溜息を吐き出しながらナルを見た。
「ちょっとぐらいさ、麻衣の言う通り人の好意ぐらい素直に受け取ったらどうなのさ。それに最後ぐらいちゃんと話してよ」
ナルを睨みながら言うと、彼は呆れたように溜息を吐き出した。
「……一体、なにが気に入らなくてそんなにムキになってるんだ?」
「──全部!」
コイツは本当に理解していない。
あたしは呆れたようにしながら、麻衣は『気に入らない』と言いたげに叫ぶ。
「急にオフィスを閉める理由とか、とにかくなにもかも不透明でハッキリさせないまま終わらせようとしてるのが気に入らないの!」
「同じく!!少しは説明しろ馬鹿!!」
麻衣を援護するように大声を出すと、ナルは煩わしそうにしている。
あたしは大人しくしていようと思ったが、この態度だと怒りがどうしても湧いてくるものだ。
プチンと何かがキレそうになり、あたしはゆらりと立ち上がってナルの元に行こうとする。
するとそれをぼーさんに止められて、彼はあたしと麻衣を制御しながら宥めてきた。
「わーった、わーった。分かったから二人ともちったー落ち着け。ナル坊にも事情ってもんがあるわな」
「「だって!」」
「要はお前らは不透明なことが不透明なまま終わるのがイヤなんだな?透明になったらそれで納得できるんだな?」
「へ?」
「ん?」
「っつーことで。ナル坊、折れる気はないか?」
どういうことだろうと思いながら、あたしはぼーさんを見上げる。
「その必要を感じない」
「意固地なことで。──ほんじゃ、ちっとばかり質問をしたいんだが、答えてくれるかね?」