第9章 忘れられた子どもたち
「ぷっ。なにこれー!」
「あははは!」
「おまえ……」
「ヤスハラ・ジョークです」
メモ帳に書いてもらうのは麻衣のものだけでも良かったが、あたしのメモ帳にも書いてもらった。
そしてあたし達の連絡先も皆に教える。
メモ帳には皆の連絡先。
それが嬉しくてメモ帳を抱きしめるように持ちながら、ふいに思った。
(ナルはともかく……リンさんなら連絡先教えてくれるかも?)
リンさんとはある程度仲良くなったと思う。
だからひょっとしたら教えてくれるかもと考えてれば、麻衣が小さな声でつぶやく。
「……ナルとリンさんに聞いたら、教えてくれると思う?」
「う、うーん……」
「ナルはともかく、リンさんなら教えてくれるかも……」
「結衣にはもしかしたら教えてくれるかもね……」
リンさんに聞きに行こうかな。
なんて思っていた時である。
「あ」
安原さんがそう声を上げたかと思えば、デッキへと出ていってしまった。
「渋谷さん!」
同じようにデッキに出てみると、そこにはナルとリンさんの姿があった。
もしかしたらダム湖に行くところだったのかもしれない。
「お急ぎですか?ちょっとお尋ねしたいことがあるんですが。お時間いただけませんか?」
安原さんの言葉に、ナルはリンさんと顔を見合わせる。
「……いまからですか?」
「今の方が良いんですけど」
「お聞きします」
「じゃ、中へどうぞ」
「ここでお願いできませんか」
「ちょっと込み入った質問なもので申し訳ありませんけど、リンさんにもお尋ねしたいことがありますので。どうぞ」
安原さんは何をするつもりなのだろうか。
そう思いながら交互に安原さんとナルを見る。
「……安原さん、なにするつもりなんだろう」
「ナルとリンさん呼んで……」
「さてな。まあ、見てみようぜ」
そう呟くぼーさんは、何処か楽しそうだった。
そしてナルとリンさんは渋々と言いたげにバンガローへと入ってきて畳の上に正座をする。
釣られてあたし達も正座。
「──えー……、それでですねー。お茶はダージリンとアールグレイどちらがいいですか?」
突然のお茶の話にあたしと麻衣はずっこける。
「お茶は結構です。用件を──」