第9章 忘れられた子どもたち
ー翌日ー
「うーん…うーん…」
我が妹は現在魘され中。
お昼近くになっても起きてこない麻衣に、集まってきたぼーさん達男性陣は苦笑を浮かべている。
「起きないなあ……」
「起きませんねえ」
麻衣の寝顔を観察中のあたしと安原さん。
そんなあたし達にジョンはなんとも言えない表情で、同じように麻衣を見た。
「……あのう。そろそろ起こしてあげはったほうが……」
「魘されてるしねぇ」
「もうお昼もとっくに過ぎてますし」
「よっしゃ。ではワタクシが」
「って何する気ですか」
「ぼーさん何するの?」
「こーするんだよ」
ぼーさんは麻衣が寝ている敷布団の端っこを両手で持つと、そのままゴロンと転がした。
見事に転がった麻衣はそのまま壁に当たって、掛け布団を抱きしめたまま呆然としている。
おかしな妹だ。
あたしはクスクスと笑い、ジョンはそっぽを向いてしまって安原さんは笑い、真砂子はおかしげにして綾子は呆れ顔。
「おはようさん」
「お、オハヨウゴザイマス……」
顔を真っ赤にさせた麻衣に皆がクスクスと笑う。
「起きたなら、顔洗ってきて着替えてきなよ麻衣」
「う、うん……」
三日前のこと。
ナルがナルのお兄さんの死体を、この村のダム湖に沈んでいると言ったのが始まりだった。
ダイバーが湖でお兄さんを捜すのを待つ間、この村の村長の依頼であたし達は廃校舎の幽霊騒動を調査することに。
なんとか事件解決して宿泊しているバンガローに戻った頃には、とっくに日付は変わっていた。
「──結局、事後処理はどうなったの?」
「助役に責任を取らせた。あのオッサンが校舎の死体を発見したってことにして、あとは自分たちで始末をつけなさいよと」
「ふうん……」
「あとはナルのにーちゃんの事だなぁ」
「そうだ!ダムの作業ってどうなってるの?」
「現在進行中。やっぱ昨日は雨で中止になったみたいだぜ」
やっぱりか……と思いながら麦茶を飲む。
今日も暑くなっているな……と思いながらも、あたしはバンガローの外を眺めた。
ダイバーの人達は今もナルのお兄さんの死体を捜索している。
いつ見つかるのか、見つかれば本当にオフィスは閉まるのか。
(どうなるんだろうなぁ……)
ぼんやりとそう考えながら、視線を畳へと落とした。