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ハツコイソウ【ゴーストハント/滝川法生】

第9章 忘れられた子どもたち


「ま、いっか」


そう言うなりぼーさんはひょいと窓枠さら乗り越えて、二階の窓から飛び降りてきた。
きちんと着地したかと思えばよろけるものだから笑ってしまう。


「いやあ、まだお若いですねー」

「安原さん!」


声がした方向を見れば二階の窓から安原さんが顔を覗かせていた。


「よう。本当に若いモンの腕前を見せてもらおうか」

「受け止めてくれます?」

「おことわりだ!」

「なあに、恥ずかしいことやってんの」


そう声を上げたのは綾子。
一階の窓からこちらを見ていて呆れたようにしている。


「あーっ、綾子だー!」

「綾子だーっ。久しぶりーっ」

「ホントにね。どこに消えたのかと思ったわよ」

「綾子のほうが居なくなったんだよー」

「そーだそーだ」

「屁理屈をこねないっ」

「ホントなのにー」

「ホントのことなんだけどなー」


綾子はこんな時も面倒臭いな。
なんて思っていれば玄関の扉が開いて、そこからリンさんの姿が見えた。


「リンさん!」


あたしが声をかけるとリンさんは会釈する。
その後ろから偉そうな表情をしたナルが出てきていて、苦笑を浮かべた。


「結衣!麻衣!」


あたし達の名前を叫んだのは真砂子。
彼女は小走りにこちらへと駆け寄ってきた。


「ま、真砂子!」

「真砂子ー!元気だったのー?」

「そういうあなた達こそ!いったいなにが──ナル!大丈夫ですの?」


こちらに走ってきたかと思えば方向転換をして、真砂子はナルへと駆け寄る。
女の友情なんてこんなものなんだと思っていれば、ジョンがこちらに走ってきていた。


「結衣さん、麻衣さん。ダイジョウブでしたか?」

「う、うん。ありがと……」

「ジョンも大丈夫だった?」


みんな離れていたけれど無事だった。
ちゃんとまたみんなと会えたことが嬉しくて、ついつい泣いてしまいそうになる。


「──そんで?誰がなにをやったんだ?」


ぼーさんの言葉に誰もが首を傾げた。


「と、聞くところを見ると滝川さんじゃないんですね」

「……少年じゃねえのは確かだな」

「それだと皆さんの立つ瀬がないでしょう。渋谷さん……ということもないですよね。無事に立って歩いているし」
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