第9章 忘れられた子どもたち
「……ナルはね。あっ、ナルっていうのは仲間の一人なんだけど。ナルはすごい冷血漢に見えるけど以外に優しい所もあるの。手品が上手いんだよ。前にそれで励ましてもらったことがあるの」
「リンさんはすっごい無表情で無口だけどね、実はすごく優しい人なんだよ。それにたまに笑うとすごく素敵でね、なんか縁起がいいような気がしてくるの」
「とっつきが悪いのは真砂子も同じなんだけどね。でもしっかりしてるの、チャッカリもしてるけど本当は結構健気だし、女の子らしいとこもいいなって思う。仲良くなれて凄く嬉しい。──そういえば、ぼーさんも綾子も第一印象は悪かったなあ」
「悪かったねぇ」
あたしと麻衣はくすくすと笑い合う。
みんなに出会ったことや、今までのことを思い出しながら笑い合うのだ。
「綾子って実はすごく世話好きなんだよね。やっかましいけど。でもね本当は綾子に世話焼かれるの好きなの。死んじゃったお母さんを思い出すんだ」
「お母さんはもうちょっと静かだったけだね」
「たしかにね」
「ぼーさんの小言はお父さんに叱られてるみたい。大きな手でグシャグシャに撫でて貰えるの好きなの。すごく好き……本人には言わないけどね。言うと他の気持ちも色々バレちゃいそうだし」
あたしが照れて言うと、麻衣がニヤリと笑う。
だから額を小突いた。
「ジョンのちょっと変な関西弁が好き。いつも控えめで大人しいんだけど、ふっと振り返ったとしに優しい目で見てくれたり……そんな事が何度もあって素敵なの」
「安原さんと一緒にいると元気が出るの。どんな大変な時ねも安原さんとぼーさんの漫才を聞いてるとね、なとんかなるやって気分になるんだよ」
「あたしと結衣は大好きな仲間と一緒にいたい。一緒にここを出て、一緒に東京に帰りたい。だからあたしと結衣の仲間を返して欲しいの」
皆のことを思い出すと心が暖かくなる。
ちょっと泣きたくもなるけれど、それ以上に心がすごくポカポカしていた。
「連れてこられたお友達にも大切に思ってくれる人や、大好きな人がいたんじゃないかな。大好きな人と会えなくなったり居なくなってしまったら悲しい。それはみんなも一緒だと思う」
「──いっしょ?」
声を上げたのはあたしと麻衣の手を繋いでいる子だった。