第9章 忘れられた子どもたち
教室を出れば暗闇が広がっていた。
明かりがないせいで上手く見えず、壁を手で探りながら歩いていた時小さな物音が聞こえた。
立ち止まっていれば、壁際に黒い小さな影がある。
曲がり角に三つの影に息を飲み込めば、ゆっくりとその影がなんなのかわかった。
(餓鬼……)
小さな頭と棒のような手足に、お腹が異常に膨らんだ身体。
棒のような足ではうまく身体が支えられないのか、しゃがみこむように足を曲げて両手を使って奇妙な歩き方をしている。
(怖くない……怖くない。ここにいるのは子供たちで、もしかした、マリコちゃんやタカトくんかもしれない。ナルが言ってた。人が『身体』と『霊』で出来ているなら、この子達は身体がないだけ)
「──……ねえ、教室に行こう」
麻衣が声をかけるとその子は首を傾げた。
「教室に戻ろう」
あたしも声をかけると、その子はさらに首を傾げる。
その行動は小さな子供であり、あたしと麻衣は顔を見合せてから優しく微笑んだ。
「あのね、教室に行きたいの。一緒に行こう?クラスのみんなと桐島先生に会いたいの」
「さっき意地悪してごめんねって言いたいの。だから、教室に連れていってくれる?」
子供たちは顔を見合せてから、まるで『着いてきて』と言うように背を向けてこちらを向く。
「ありがとう」
「ありがとうね」
階段を降りていき、一階へと向かえばそこにも子供がいた。
何人もの子供たちがいて、彼らと共に歩き出して教室へと向かっていれば誰かの手があたしの手に触れた。
驚いて下を見ると、一人の子があたしと麻衣の手を繋いでいる。
それが少し嬉しくてあたしと麻衣は笑う。
教室に入る。
中には子供たちがいっぱい居て、教員席には大きな影が座っていて、直ぐに先生だと気が付いた。
「──先生、みんなもさっきはごめんなさい」
「酷いことを言いました、ごめんなさい」
「でも、もう一度同じことをいいます。もう、お友達を増やすのはやめてください」
先生はゆっくとり立ち上がるとこちらへと歩み寄ってくる。
「あたしと結衣の仲間を返してください。先生が皆を大切に思っているように、あたしと結衣も仲間が大切なんです」
「みんなが先生やお友達を好きなように、あたしと麻衣も仲間が大好きなの」