第9章 忘れられた子どもたち
桐島先生が叫ぶと教室の扉が開いた。
「ぼくの生徒に勝手なことするな!」
「先生、わかってください!」
「みんな死んでるの!」
「うるさい!うるさい、うるさい!ぼくも生徒もこのままでいいんだ!」
突然、何かがあたしと麻衣目掛けて飛んできた。
それが身体を切り裂いたような気がして、怪我なんてしていないけれど鋭い痛みが身体を襲う。
それと同時に教室から押し出されてしまい、深い闇に落ちていきそうになる。
その時、ナルの声がした。
──麻衣、結衣。戻れ!
(ナル!?)
自分の身体を思い出すんだ!
ふいに覚醒する。
身体が勢いよく跳ねた感じがして、気怠げに目を開ければ教室が広がっていた。
「……失敗しちゃったね」
「うん……。どうしよう、先生を怒らせちゃったかもしれない」
「……どうしたら桐島先生を説得できるんだろう」
『ぼくも生徒もこのままでいいんだ!!』
そんなのいいはずがない。
今のままじゃ子供たちも先生も可哀想だというのに。
「いつまでも寂しくて、寂しいから仲間を増やしても、増えた分寂しさの数が多くなる……」
「先生はとても優しい人なんだよ。だから、生徒が大切でこんなことをしてしまったんだよね」
「うん……でもあたし達だって仲間が大切だから、全員揃ってこの校舎を出たいよね……」
「うん……」
だが、どうやったら良いんだろう。
そう思った時、ナルの言葉を思い出した。
『同情でもあわれみでもいけない。ほんとうに純粋に優しい気分で相手に語りかける──』
あたしはそうしただろうか。
いや、出来ていなかったのだ。
「麻衣。同情と哀れみじゃいけないんだよ。ナルに言われたのに忘れてたね」
「……そうだ、そっか。バカだね、あたし達」
「……ね。──よしっ、再チャレンジだ!」
あたしと麻衣は勢いよく立ち上がり、気合いを込めるが動きを止めてしまった。
「……どうするかなー」
「どしようか……」
どうすればいいんだろう。
そう思っていると、麻衣が『あ……』と呟いた。
「──教室」
「え?」
「一階の教室に行ってみよう、結衣。あそこなら先生や子供たちに声が届きそうな気がする」
「確かに。行ってみよう!」