第9章 忘れられた子どもたち
「──……待って」
麻衣が声をかける。
それに続けてあたしも声をかける。
「……待って、桐島先生!」
「ダメです、連れて行っちゃダメ!」
桐島先生がこちらを振り返る。
優しい面影なんてなくて、ただ陰惨とした表情。
「……ダメです。先生もその子たちも死んでるの」
「分かって下さい、先生。もう全員死んでるの……連れて行っても苦しだけで楽にはなれない」
桐島先生はゆっくりとこちらを歩いてくる。
無表情で陰惨な表情で、あたしは思わず息を飲んでしまう。
「家にも帰れない、お母さんも会えない。辛いばっかりで何一つ良くならないんです……!」
腕が伸びてきて、彼はあたしと麻衣の肩を掴む。
その力はとても強くて、痛みに顔を歪めていれば強い力で力任せてで横を向けさせられた。
「先生……!」
無理やり横を向けさせらて、そちらへと視線を向ければそこには教室が広がっていた。
あたしと麻衣は教室の黒板の前に立っていて、教室には十八人の子供たちがいる。
「転校生を紹介するぞ。谷山結衣さんと谷山麻衣さんだ。みんな仲良くするんだぞ」
はあいと全員が揃って返事をして笑う。
そして桐島先生はあたしと麻衣を連れて、それぞれ椅子に座らせてきた。
「谷山さん達は、みんなよりずっとお姉さんだから困ったことがあったら相談してみろ。谷山さんたちも宜しくな」
あたしの隣には女の子が座っている。
彼女はあたしを見ながらニコニコと人懐っこそうな笑みを浮かべていた。
転校生とはどういう事なんだ。
あたしは驚きと困惑で桐島先生へと視線を向ければ、彼女の隣には小さな女の子がいて、桐島先生の服を引っ張っている。
「せんせい、これで四十一人だね」
「おっ、えらいぞ。ちゃんと計算できたな」
おそらく、行方不明になった子供たちは転校生としてこのに連れてこられたのだ。
「なんにんになったら、べつのクラスができるの?」
「そうだな。もうそろそろ二組にわけてもいいなあ」
「でもせんせいがひとりしかいないよ」
「大丈夫だ。もうすぐ先生が増えるぞ。そうしたら職員室を作らなきゃいけないなあ」
もしかしてぼーさんやリンさん達のことだろうか。
「すごいねえ。はやくがっこうがいっぱいになるといいね。せんせい!」