第8章 呪いの家
「──タリツタボリツハラボリツ。タキメイタキメイ カラサンタンウエンビソワカ!」
ぼーさんが独鈷杵をおこぶさまに突き立てる。
その途端、見えない力がぼーさんを吹き飛ばしたのだ。
ぼーさんは勢いよく壁にぶつかる。
「ぼーさん!」
慌てて彼に駆け寄って、転がっているぼーさんを助け起こした。
「……ジョン。悪いがあの独鈷杵……あれで流木を壊せ」
ぼーさんの言葉を聞いて、ジョンが祠へと走る。
そして独鈷杵を引き抜いてそれを振り上げたが、突き刺す間もなくジョンも吹き飛ばされた。
「ジョン!」
すると安原さんが落ちた独鈷杵を手に取り走り出した。
「安原さん!?」
「少年!?」
安原さんが祠に走り出したが、ジョンと同じように突き刺す間もなく飛ばされた。
「安原さん!大丈夫!?」
「まあ、なんとか……生きてます」
怪我をしていないか確認しようとした時、冷たい声が洞窟に響いた。
「その程度か?」
気遣うこともない、冷たい眼差しでナルがぼーさんを見下ろしている。
その表情と言葉に怒りが爆発した。
「ふざけないで!!何様のつもりよあんた!!」
あたしの手のひらがナルの頬を打つ。
乾いた音が洞窟に響いて、背後からぼーさんの『結衣!?』という驚いた声が聞こえたのと同時に麻衣が叫んだ。
「──いい加減にしなさいよ!あったまきた!なにムキになってんの!?みんなあんたを助けるのでとっくに限界きてんのよ!なにがあんたのプライドの為にどーしてそこまでしなきゃなんないわけ?バッカじゃないの?そんなにプライドが大事なら人に頼らず自分でやれば!?他人に守ってもらってそんなプライドがなんぼのもんよ!!」
麻衣の言葉に『その通りだ』と言いたくなった。
あたしと麻衣はとうに怒りが爆発してしまっているのだ。
「正論だな」
初めてナルに勝てた気がした。
「ぼーさん、帰ろ。もうじゅうぶんだから」
あたしは隣にいるぼーさんを支えながら立たせる。
このままだとぼーさんたちの命が危ない。
「ああ……ナルちゃん悪いな。限界だ」
ジョンとリンさんがぼーさんを支え、綾子と真砂子が安原さんを支えて歩き出す。
「ナル、行くよ」
「さっさとしないと危ないよ」