第8章 呪いの家
「えー。誰も冗談なんて言ってませんよ」
「おれたちだって、どうなるかわからねぇんだからな!」
「ぼくの運の強さは緑陵の事件で実証済みじゃないですか」
「そーだそーだ!それにぼーさん、安原さんが言った通りあたしも麻衣も自分の身ぐらい守れるよ。守れるためにぼーさんが真言教えてくれたじゃん」
ぼーさんは苦虫を噛み潰したような顔をする。
彼は本当にあたしたちの身を案じてくれているのは分かるが、ぼーさん達だけ危険な目に遭うかもしれないのにのうのうとベースにはいられない。
「……おれは本当に知らんからな!」
捨て台詞を吐いたぼーさんは歩いていってしまう。
その後ろ姿を見送り、ジョンは慌ててついていく。
「ということで、皆さんもできるだけ来てください」
「あのねぇ、ボウヤ。これは──」
「遊びじゃないのはわかってます。救助要員が必要なんです。昨夜のあの傷を見たでしょう?」
ぼーさんの背中は深い傷があった。
出血も酷くて、オキシドールを吸わせたコットンがすぐに真っ赤に染ったのを覚えている。
「あれ、まだ出血してると思いますよ。そうとう深かったから。ブラウンさんもね、腕に深い傷があります。あれも縫わなきゃダメだと思うな。救急車が横付けできる神社ならともかく、洞窟で倒れたら渋谷さんとリンさんだけじゃ連れ戻せませんよ。ぼくたちが行かないなら、あの二人にも行かせない……そういうことにしませんか」
「……うん」
「……まったく。男どもときたら!」
「こうなったら仕方ありませんわね。……結衣、麻衣」
突然真砂子に名前を呼ばれて、二人揃って『はい!』と返事をしてしまう。
「服を貸していただけます?こんな格好じゃ、いざというとき話になりませんわ」
あたしと麻衣は顔を見合せてから、真砂子に服を貸し出すことにした。
麻衣は上の服、あたしはジーパンを貸すことに。
「こんなんでいい?」
「たぶん、体格が一緒くらいだからサイズは大丈夫と思うよ」
「ええ、ありがとう」
あたしと麻衣はニコニコとしていた。
そんなあたし達を真砂子は眉を寄せて見ている。
「……あたくしが洋服を着るのがそんなに変ですかしら」
「いやーそれもあるけどー」
「それだけじゃなくてー」