第8章 呪いの家
「祀りを怠ればまた同じことを繰り返す」
「それでも当面は大丈夫なんじゃねぇか?相手は『えびす』とはいえ、神の一種だぞ。化け物よりタチが悪い。化け物を狩る方法はないと言ったのはお前だろうが」
「そうだよ。ナル、美山邸の時に化け物は狩れないとか言ってたじゃん」
ぼーさんの言葉に同意するようにあたしも言う。
美山邸の時、自分で化け物を狩る方法はないとはっきりと言っていたのにと睨む。
だがすぐにあたしは青ざめることになった。
何せナルがとてつもない底冷えするような顔で笑っているから。
「あいつを見過ごせって?冗談じゃない。これだけ愉快な経験をさせてもらったんだ。きちんと返礼をするのが礼儀というものだろう」
怒っている。
これはだいぶ……いや、相当怒っているとあたしたちは青ざめてしまう。
「それともリタイアしたいか?」
「ア……アタシは駄目だからね!あそこにはおすがりできる樹がないんだから」
「ボクも……憑依霊やったともかく『えびす』なんて何がなにやら」
「リン?」
「わたしには太刀打ちできるとは思えません。ナル、辞めた方がいい。あれは我々の手にはおえません」
「ぼーさん?」
「やるだけはやってみるが……ナルちゃんよお。ここはリンの言う通りに……」
「力量のないものは必要ない」
ぼーさんたちはその言葉に見事に煽られた。
だいたいこういう事が多いな……と思いながらも、あたしは何度目かの溜息を吐き出すのであった。
「──で、結局こうなるわけだ」
ぼーさんは袈裟姿に、ジョンは礼拝服を身につけている。
結局ぼーさんたちは『おこぶさま』の除霊を行うことになったのである。
「さてと。少年、真砂子、綾子、結衣、麻衣は残れ。何がおこるか分からんからな」
「いやだ!あたしも行く」
「あたしも行く!」
咄嗟に言うあたしと麻衣をぼーさんは軽く睨んできた。
「邪魔だ。守ってやれるとは思わねぇ」
「だけど……」
「自分の身くらい自分で守れますよね、谷山さんたち」
不意に助け舟が現れた。
驚いて振り返れば、安原さんがにこにことしている。
「ちなみにぼくもいきます。ご心配なく。やばいと思ったら滝川さんより先に逃げてみますから」
「あのなあ!今回ばっかりは冗談じゃすまねえんだぞ!」