第8章 呪いの家
「神社があって、その裏手に洞窟がある。そこは死体の流れ着く場所だ。小さいな祠があってそこには『おこぶさま』という『えびす』が祀られている。洞窟から神社の方角へら岸壁を削った道があり、古い石段がある。何のためにそんな大変な工事を?むろん、意味があるに決まってる。あの神社の御神体があるからだ。その為に止むを得ずやった。しかもチャチな神ならそこまでしない。あの祠に祀られているものはそれをさせるほど大きな力を持った神だったんだ」
「……なるほど。それでいまの伝説か」
何となく理解は出来た。
そう思いながら、あたしたちは畳の上に座る。
「そう。この辺りには大きな力を持った神がいた、という伝承があるはずだと思ったんだ。それで安原さんに資料を見直してもらった」
ご苦労さまです。
あたしはそう思いながら、資料が乱雑している畳を見た。
「『おこぶさま』は『えびす』神、しかも海の災害をよく鎮た。しかも祀りを怠ると祟る、凶悪な神でもあったわけだ。その『おこぶさま』を祀っていると思われる神社は今では祠と切り離されてる……この家がそうしてしまっているんだ。恐らくここはもともと神社の一部だった。境内が切り売りされてしまったと考えるのがスジだ」
よくもまぁ、眠っていたのにここまで分かるものだ。
あたしは関心したように息を吐き出しながら、不機嫌そうに話しているナルを見る。
「ハフリがいたのなら、きっと神社の傍に住んでいたんだろう。ひょっとしたらそれはここじゃないのか。ハフリが住んでいた場所が一揆の首謀者の墓を建てる際に分割された。それが妥当な線だろう。さらにそこが民家として転売されてしまったんだ。『おこぶさま』はここに住むものを自分を祀るべき祭司だと信じている。祀るべきものが祀らないから祟る。いまの伝承はその証拠だ。だから祟りの猛威を奮っていながら、一家は皆殺しになっていない。自分を祀らせるために、祭司が必要だからあえて残したんだ」
あたしたちは唖然としてしまう。
本当に先程まで眠っていたのだろうかと疑ってしまうぐらいなのだから。
ナルがいたらやはり凄い。
改めてそう思わされてしまったような気がした。
「──『おこぶさま』の除霊を行う」
「必要あるのか?祀ってやればいいわけだろ?」