第8章 呪いの家
それを見ながら結衣は自身の腹部を見て驚く。
血が確かに溢れていたように見えたが、血なんてついていなかった。
なんともなかったのである。
(たしかに、刺されたと思ったのに……)
なんともない。
だが痛みはしっかりとあった。
「どうした!?」
法生が結衣に駆け寄ろうとしたが、その周りにあの白いものがいる。
「ぼーさん!よけて!」
慌てて結衣が声をかける。
法生の足元にあの白いものがあるのだ。
「なに?」
そして白い光は法生の足を貫く。
すると法生はその場にしゃがみ込んでしまった。
「ぼーさん!」
「──ってぇ。なんだこりゃ」
「ぼーさん!大丈夫!?」
慌てて結衣が駆け寄ろうとした。
「ぜんぜん大丈夫じゃねぇ。キャタハンジャサハダヤソワカ!」
法生が指を組んで叫ぶ。
するとどっと辺りが赤色に染まり、結衣は驚いたように瞬きを繰り返した。
赤色に染まってあの白いものが消えている。
「いまのうちだ、いけ!」
「あ、う……うん」
麻衣は葉月を抱えて、結衣は和歌子を抱えて走る。
そして飛び込むようにベースへと入った。
「──谷山さんたち!よかった、みんな無事ですね」
全員がベースに寝ろこがったり、その場に座り込んで息切れを起こしていた。
そして結衣の傍に法生が寝転がる。
「ぼーさん、大丈夫……?」
「……ここで眠らせてもらえたら、一億円はらってもイイ……」
「少しお休みになったら。もう大丈夫のようですわよ」
「おれがお休みになったらここの結界も解けるでしょーが」
その言葉に結衣は窓を見る。
カリカリと引っ掻くような音が聞こえてきて、死霊がまだ窓の外にいるのだと知った。
「ねえ……これからどうなるの?」
「とりあえず朝まで待とう。夜明けになればおさまるだろ」
朝まで待つ。
意外と長いことになりそうと結衣は痛む腕を撫でた。
「そういえばナルは?大丈夫なの?」
「大丈夫です。起こされずにすみました」
リンは蝋燭を持ってこちらに寄ってくる。
よく見るとリンは怪我だらけであった。
「谷山さんたち、怪我を見せてくださいな」
真砂子が救急箱を持って双子に話しかけた。