第8章 呪いの家
「ヘーキ、ヘーキ。たいしたことないよ」
「うん。たいしたことないよ、ほとんど擦り傷だもん」
「消毒だけでも」
真砂子が押すように言うので双子は消毒だけ受けることに。
染みるから嫌だと双子は揃って思っていたが、そこは我慢することにした。
「滝川さん、怪我は?」
「いっぱい。男に見てもらうとありがたさも半減だなあ」
救急箱を持った安原が滝川に近づく。
「そんなクチがたたけりゃ、たいしたことないですね。はい、見せて」
安原は法生の服を背中のほうかめくる。
「えっちー!」
「頭からオキシドールかけてあげましょうか?」
法生の背中には大小の切り傷があった。
酷い場所からは血が溢れていて、結衣は思わず息を飲んでしまう。
そして安原はその怪我を見て眉を寄せたが、容赦なくオキシドールを染みさせたコットンを傷に付けた。
「しみますよ」
「あだだだだだ!!」
「男の子でしょ、我慢する!」
「おれ今日から女の子になる!」
「気持ち悪いからやめときなさい」
逼迫した空気が法生と安原のやり取りで和らぐ。
彰文たちはそんなやり取りに微笑んでいた。
「あたしも手伝うよ」
「ありがとうございます、結衣さん。じゃあ、絆創膏……は、間に合わないか。シーツとかを破りましょうか。結衣さんは滝川さんの消毒をお願いします」
「りょーかい。ぼーさん染みるよ」
「女の子にしてもらえるなら我慢出来る」
「……女の子なら誰でもよさげな発言だね」
「いだだだだ!!いま、傷のところ押したな!?結衣ちゃん!!」
「気の所為だよ、気の所為」
「なんか怒ってる!?」
「怒ってないよ、怒ってない」
なんてやり取りをしている時、リンがなにかに気がついたのか上を見あげた。
「リンさん?」
「どうしたの?」
それに気が付いた双子が声をかける。
「式が戻ってきました。これで五つ揃った。滝川さん、眠っても大丈夫ですよ」
「なにも見えなかったケド……」
「うん。何も見えなかった……」
「……それが式ですの?」
双子は見えていなかったが、真砂子は見えたようだ。
「気配をごらんになられますか?」