第8章 呪いの家
窓が多数の手でノックされる。
その音は段々と強くなっていた。
「安原さん。こちらへ」
窓を強く叩かれだす。
今にも割れそうになっていて、真砂子が襖の近くに座るとお経を唱え始めた。
その隣に安原が座る。
音がどんどん強くなっていたとき、窓にヒビが入る音が聞こえた。
「窓が割れ──」
麻衣の言葉を遮るように、窓が割れて一斉に窓の外にいたもの達が入ってきた。
するとリンがすぐ様に指笛を鳴らし、綾子が九字を切る。
「臨兵闘者皆陣烈在前!」
入ってきたものたちが吹き飛ばされていく。
「結衣、麻衣っ!あれは死霊だからエンリョはいらないからね!」
「う……うん!」
「わ、わかった!」
九字を切る指を作った時だった。
結衣は身体を固めてしまったのだ。
「な……奈央さん……」
死霊の群れの中に奈央がいた。
こちらに張ってくる姿に双子が動きを止めてしまったのだ。
「結衣!麻衣!ぼさっとしてんじゃないの!」
「う……うん……」
なんとかしなければ。
ここでぼさっとしていれば、麻衣にも危険が及ぶ。
結衣は慌てて九字を撃った。
「臨兵闘者皆陣烈在前!!」
死霊が何体か吹き飛ぶ。
ふと、ナルがいる部屋の方向に視線を向けると小さな子供がナルがいる部屋の方向へと行っているのが見えた。
「臨兵闘者皆陣烈在前行」
リンがすかさず吹き飛ばす。
「──ねえ。あいつらもしかして、ナルを狙ってんじゃないの?」
綾子の言葉通り、死霊たちはナルの部屋の元へと向かっている。
ナルを狙っているのか、それともナルに憑いているものの解放を狙っているのか。
「臨っ……いっ!?」
九字を撃とうとして、痛みが襲った。
なんだと思いながら結衣は痛みが走る腕を見ると、パックリとそこが切れていた。
「鎌鼬……」
慌てて辺りを見渡すと、麻衣や綾子にリンも怪我をしていて服が血で色を染められていた。
何度も何度も鎌鼬が襲ってくる。
その度に腕や足に痛みが走り、九字が上手く撃てない。
それでは自分たちは対抗しようがない。
そう思っていた時であった。
結衣の横で何かが横切る。
同時に鈍い突き刺さる音が聞こえた。