第8章 呪いの家
法生と安原の言葉に双子は呆れたような目を向ける。
こういう時に限って何故のほほんと出来るのだろうか……と溜息を吐き出してしまう。
暫くした時だった。
あの恐竜の寝息のような低い音が聞こえてきたのである。
「また……あの音が……」
「“恐竜の寝息”……」
「──いや、よく聞いてみろ」
法生の言葉によく音を聞いてみる。
すると耳にお経のような音が入ってきたのだ。
「お、お経……?」
「相手が六部なら、さとありなんってところだな。三人のほうが犯人か。よし結衣たちはここに残れ。おれとジョンで様子を見てくる」
「……気をつけてね、ぼーさん」
結衣が不安げにしていれば、法生は笑みを浮かべてから彼女の頭を撫でた。
「お兄さんに任せとけ」
法生とジョンはベースを出ていく。
すると綾子が歩み出した。
「アタシもいくわ」
「綾子!?残れって言われたでしょ。あたしたちが行っても邪魔になるだけだよ」
「そうだよ。足でまといになるよ、綾子!」
「あんた達と一緒にしないでくれる?アタシはこれでもプロなんだからね」
その言葉に麻衣は苛立ちを覚えた。
「そのわりには役に立ったことないじゃない!」
「仕方ないでしょ。こっちにだって都合があったんだから!ここならできる」
綾子の瞳は真剣だった。
そんな彼女に結衣と麻衣は思わず顔を見合わせる。
『ここならできる』
それはどういう意味なのだろうか。
そう思っていれば、ベースの明かりが一斉に消えた。
「明かりが!」
「キャッ!」
真砂子が短い悲鳴を上げる。
「真砂子!?」
「どうしたの?」
「……あれ……!」
真砂子が指さす方向を見る。
窓があるのだが、そこには一本の腕が上から伸びてきていた。
「う、うで……?」
もう一本の腕が上から出てくる。
二本の腕が軒を掴み、そして逆さまに男の顔がこちらを覗いた。
虚ろな瞳がこちらを見ている。
結衣は悲鳴をあげそうになり、咄嗟に唇を噛む。
男は窓に張り付き窓を叩く。
だが窓に張り付いているのは男だけではなく、何人もの女のようなのものや子供のようなものがいた。
「……増えてる」
結衣が息を飲んでいると、リンが立ち上がってこちらへと歩いてくる。