第8章 呪いの家
「それで災害はやみ、以降は豊作に恵まれた──」
「──どっちの話も『おこぶさま』か……」
「この二つ、共通事項が多いんですよね。村に三人の『マレビト』がやってきて『おこぶさま』についてなにかをいう。しかし『マレビト』は欲ボケした村人によって殺されてしまう。犯行は『長者』が関係していて死んだ……あるいは死体を捨てた場所は海です。結果村に悪いことがおこったと。両方とも話の大筋は同じなんですよね。たんなる伝説とは思えないんですよ」
マレビトに長者におこぶさま。
どれも関係していることに結衣は驚きながらも、納得したかのように目を瞑る。
(どの話にも『おこぶさま』が登場するんだ……)
洞窟にあった、夢の中で歪む『おこぶさま』が入っている祠。
あれも関係しているのだろうかと考えていた。
「つまり過去実際にそういう事件があったんじゃねぇかって?」
「だと思うんです。モデルになる事件があって、語り継がれていくうちに二つのタイプに分裂してしまったんじゃないかなと。で、郷土史を調べてみたら出てきました。『御小仏様(おこぶつさま)』という伝説が」
「御小仏様?おこぶさまじゃなくて?」
「ええ。でもタイプAとよく似た話なんですよ。このへんの海外に木の棒が打ち上げられて、お坊さんに見せたところこれはありがたい仏様だと。お経を唱えると金の像に変わったんですが、一夜明けたらもとの木の棒に戻っていた。それでも以来それを『御小仏様』と呼んで祀ることにした……って」
「……三人の行者、もしくは座頭──」
ぼそりと法生が呟く。
その言葉に安原が首を傾げた。
「なんです?」
「神社にあった塚だよ」
「ああ『十八塚』ですか」
「塚が三つあっただろう?別名を『三六塚』。『三つの六塚』じゃねぇのか?」
「なるほど、ありえますね。でも『六塚』って?」
「『六部塚』ってのは?」
「ああ!『三つの六部塚』が略されて『三六塚』か。そうするとタイプBの最後の部分とぴったり当てはまるんだ。『社を建てて塚を建てた』っていう」
双子は同時に首を傾げる。
法生と安原の言葉に疑問を抱いていたのであり、麻衣が法生の服を引っ張った。
「ぼーさん、ぼーさん。ろくぶって?」