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ハツコイソウ【ゴーストハント/滝川法生】

第8章 呪いの家


成程……と結衣は理解する。
自分たちのような人間を『マレビト』と呼び、昔は殺されたりされていたのかと少しなんとも言えない気分になった。


「だいたいが村へきた『マレビト』がやな奴だとか金を持ってったって理由で殺されて、その結果祟りがおこるという話しです。『マレビト』というのは軽蔑される同時に畏怖の対象でした。だから彼らの命は軽視されて、些細な理由で殺されてしまうわけですが、殺した後に祟る存在でもあったわけです。本当に祟りがあったかはともかく──『マレビト』を殺してただで済むわけがないという恐れのあらわれが、伝説になって残ったんでしょうね」

「わかるなあ……あたしたちも馬鹿にされたり意味なく有り難がられたりするもんね」

「でしょう?」


それこそ緑陵高校では馬鹿にされる事が多かった。
詐欺師呼ばわりされたり、軽蔑されたりと酷いものを見られるような扱いをされた。

逆に有り難がられたりもした。
それはそれで困ったような感じがしたのを結衣はよく覚えている。


「それでここに残る『異人殺し』ですが……これには二つパターンがあります。どっちが本当なのか、どっちもあった事なのか。それともどちらも無かったことなのか、それはよく分かりませんけどね。まずタイプA」


──昔、村に三人の修験者がやってきた

彼らは『おこぶさま』を見てこれは祟りをなすものだとといい除霊をおこなった

すると『おこぶさま』は金の仏像に変わり修験者はこう言った

ありがたい仏像が波に洗われてこんな姿になった為祟るのであろう
都にお堂を建てて祀ることにしよう

ところが村の長者がこの金の仏像欲しさに行者を海岸で殺してしまう
すると行者を殺す同時に仏像はもとの木の棒に戻ってしまった

ほどなく長者の家は不幸が続いて絶えてしまったので、行者の祟りといわれる──


「そしてタイプBです」


むかし村に三人の座頭がやってきた

彼らは『おこぶさま』を見てありがたい神様だから社を建てて祀るべきだという

しかしこの年の凶作で村人にそんな余裕はなかった
しかも村人の一人が座頭たちが大金を持っているのを見てしまう

村人は長者の家に座頭を招いて食事に毒をまぜて殺し、金を奪って死体を海に捨てた

以来嵐や高波が続いたので村人は後悔し
『おこぶさま』を祀る社を建て座頭の塚を建てた
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