第8章 呪いの家
「心中……か」
「ええ。次男が妻と二人の子供を殺して死にました。無理心中というやつですね。それと客が二人死んでいますが、原因ははっきりしません。海岸に死体が上がったので一応事故ということになっていますが、怪しいと思いますね。あと死んだ霊能者が三人。二人は自分たちで焚いた護摩の火が衣に燃え移って死んでいます。残り一人は原因不明の急死。──計十三人です」
十三人という数に結衣は眉を寄せる。
思ったより人数がとても多い。
「その前のひいおじいさんの時には新聞に載っているだけで家族が六人。ただ戦前のことなので本当に六人だったか怪しいと思いますね。井戸に入っていた毒物のせいで死んだらしい……と。これは金沢のお店を閉めてこちらへ移ってきてすぐのことです」
「じゃあ、曾々じいさんが死んだのはこっちに移ってからか」
「そのようですね」
「享年七十八歳だからずいぶん高齢ですよね。もう息子に店を譲っていたんじゃないでしょうか。これが過去帳です」
「ああ、コピーさせてもらえたか」
「ええ。朝一番にお寺へ行ってコピーさせてもらって、それさら市立図書館によって直ぐ金沢に行ってきたんですが──」
「金沢までいってきたの!?」
能登から金沢はかなり離れている。
その距離を行ったのかと双子は目を見開かせてしまった。
「行きましたとも。で、コピーを見ていて妙なことに気づいたんですが……おばあさんは確かこう言ったんですよね」
『代替わりの時に必ず変事が起こるというのです』
「でもね、実際に吉見家で代替わりの時に大量に死人が出ているのは先代と先々代の時だけなんです」
安原の言葉に全員が固まる。
代替わりの時に必ず……と言うので、その前からずっと大量に死人が出ていると誰もが思っていたのだ。
だがそうではないらしい。
「それで帰りにもう一度お寺へ寄って、本家分家全部の過去帳をコピーさせてもらいました。──結論を言いますと、問題は吉見家じゃなく、この場所にあるんですよ。彰文さんたちの一族──金沢の分家と呼びます。分家はここに越してきてから変事にみまわれるようになりました」
「ここに……?」
「はい」
吉見家に原因があるわけではなく場所。
そんなこと思ってもいなかったと結衣は目を丸くさせる。