第8章 呪いの家
法生の怪我も酷いが、リンがそれ以上に酷かった。
何回も鎌鼬を受けたせいだろう……あちこちに傷が出来ている。
消毒をしてガーゼを取り出し伴奏を貼る。
結衣はそれを繰り返していたが、ぽつりと呟いた。
「なんで、こんな事になったんだろう……」
「結衣……」
「こんな事にならない為に、あたしたち……来たのに……」
声が震え身体が震えている。
そんな彼女の肩に法生は手を置いて、顔を覗き込む。
「結衣」
大粒の涙が彼女の瞳から溢れ出した。
嗚咽が聞こえ、震える身体を見てから法生は結衣を抱き寄せる。
「結衣……」
頭を抱え込み、自身の胸に顔を押し当てる。
その優しい行動に結衣はますます涙が止まらなくなり、小さく声を上げて泣き出した。
法生はそんな彼女を無言で抱き締め、リンは無言で彼女のことを見つめる。
(こんな事になるなんて……こんな事にならない為にあたしたち来たのに……!)
ただ、彼女は泣くしか出来なかった。
泣いたって状況が変わるわけじゃないのは分かっている。
だが涙が止まらなかった……。
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「……そうですか……」
日没、外に調査していた安原が戻ってきた。
そして昼間に起きた事件を聞いて、彼は小さく呟く。
「……元気出しましょう。まだ終わったわけじゃないんですから。こんな犠牲を出して負けて帰ったらそれこそ何のために来たんですか」
「……ん……」
「だな……」
「そう、だね……」
安原の言葉に結衣は小さく頷く。
確かにここで負けて帰ったら何のために来たのかという話である。
全くもって安原の言う通りであった。
「さ!そうとなったら宿題を片付けちゃいましょう!」
安原は勢いよくリュックを畳の上に置く。
何やら重そうな音がしたのは気のせいだろうかと結衣は首を傾げる。
「まず、これが滝川さんご要望の新聞のコピーです。これが先代、こっちが先々代」
「おつかれさん」
「要約するとこうです。先代──つまり彰文さんのおじいさんがひいおじいさんから家を譲られた時、八人の人間が死んでいます。四人は心中。残り四人のうち一人が自殺、一人が事故、他の二人が原因不明の急死です」