第8章 呪いの家
そんな会話をしていれば、裕恵が消化器を二本もって慌て駆けてきているのが見えていた。
「消化器もっとありますか?」
「あります。いま、持ってきます」
「あたしも手伝います」
「消化器どこにありますか!?」
全員が慌てている中、リンが何かに気がついたのがどこかを見ている。
それに気がついたのは結衣であった。
「リンさん……?」
「──ナル」
「え?」
「この場をお願いします!」
「リンさん!?」
「どうしたの、リンさん!?」
「お願いって……ナルになにかあったの!?」
リンは突然走り出してしまった。
そんな彼に双子は驚いていたが、追いかけなくてはと同時に思った。
「ちょっと結衣、麻衣、どこに……」
「ごめん、綾子!おばさんを手伝って消化器を集めて!」
「この場はお願い!」
「結衣、麻衣!」
恐らくリンはベースの方にいるはず。
双子は慌てて駆け出してから、慌ててベースへと飛び込んだ。
「リンさん!」
飛び入ると、叫び声が聞こえた。
驚いていれば、そこにはリンの後ろ姿と和泰の後ろ姿。
だが和泰はまるで獣のように叫びながらナルが眠っている襖を包丁で滅多刺しにしていた。
「和泰さん……」
「和泰さんも、憑依されてたの……」
「やめなさい。そこを開ければ貴方が死ぬことになります」
冷静なリンの言葉に、威嚇するように和泰が叫ぶ。
「結衣さんたち。九字を撃ってみますか」
「九字……!?でも、あれは人に向けちゃダメって!」
「わたしだと大怪我をさせてしまいます。あの結界はそんなに持ちません。ナルを起こされては終わりですよ」
「でも……」
「九字は……」
双子の脳裏には克己たちの火膨れしていた背中が浮かぶ。
怪我をさせてしまうと、その恐れが膨れ上がっていく。
その時、和泰が叫んだのと同時に何かが破れる音が響いた。
和泰の向こう側……襖の向こう側にはナルが見えた。
「ナル……!」
このままではナルを起こされる。
二人は咄嗟に九字を切るときの指をしたが、躊躇いが出てしまう。
そんな彼女たちを置いて和泰はまた包丁を振りかざしたが、それより先にリンが指笛を鳴らした。
襖の向こうから何か手のような物が現れる。
そしてその手は和泰の腕を傷つけた。