第8章 呪いの家
大怪我をさせてしまうとはこういうことなのだ。
結衣はそれを知って、自分が直ぐに九字を切れば良かったと後悔する。
するとリンはゆっくりと和泰に近寄る。
それを見た結衣は慌てて声をかけた。
「リンさん!危ないよ!」
リンは和泰へと手を伸ばす。
すると和泰はそれを睨みつけた途端、リンの腕が何かで切られた。
「リンさん!」
このままではリンまでが危険だ。
そう思った結衣は眉を寄せてから和泰を見る。
「臨 兵 闘 者 皆 陣 烈 在 前!」
和泰が吹き飛ぶ。
唸り声を上げる和泰に結衣は一瞬怯んだ時、彼は結衣へと体当をした。
「うっ……!?」
「結衣!」
思わず咳き込んで蹲っていると、和泰が何処かへと逃げ出す。
「結衣さん!滝川さんを呼んでください!ベースに誰か人を!」
リンは和泰を追いかけ、双子は慌てて立ち上がってから火事現場へと向かった。
すでに鎮火したようで、法生たちは煤まみれになっている。
「ぼーさん!」
麻衣が声をかけると、法生がこちらを振り向く。
「どうした」
「……和泰さんが……和泰さんがベースを襲ったの!それでリンさんと乱闘になって外に……ぼーさんに来てって!」
「わかった、ジョン!」
「ハイです!」
「アタシたちも」
「待って!綾子たちはベースにいて!」
「また襲われないようにナルを見てて!」
「結衣と麻衣は?」
「あたし達は追いかける!」
「あたしたち非力だから。あたしたちしか出来ないことがあるの!」
双子と法生とジョンは外へと飛び出した。
だがリンと和泰が何処にいるのか分からず、辺りを見渡して捜す。
するとどこからが指笛の音が聞こえた。
「リンさんの指笛だ……」
「リンの?」
「岬のほうだよ!あっち!」
結衣が先頭になって走り出した。
そして広い庭を走り、茶室の方へと向かうとリンの姿があった。
リンには傷が増えていて、あちこちから血が滲んでいる。
「……滝川さん、気をつけて。彼は鎌鼬を使います」
茂みの向こう側に和泰がいる。
それを見ながら双子が息切れを起こしてしゃがみこみそうになっていた時であった。
後ろから誰かに押された。