第8章 呪いの家
「で、友人の滝川ってのが危篤だってことにして抜けてきたんです。あらゆる交通手段を駆使してなんとか朝一番についたというわけで」
「それは、お疲れ様です」
「お疲れ様でした、安原さん。もー、ぼーさんも無理させちゃ駄目だよ」
「おれも悪いって思ってるよ」
結衣の叱るような発言に法生は苦笑いする。
「それで?ぼくはなにをすればいいんですか」
「おれたちはここから動けない。少年には外で情報を集めてもらいたいんだ」
「探偵をやればいいんですね。どういう性質の情報を?」
「詳しいことは今から説明するが……そういや少年。安政年間てのは何年ぐらいだ?」
「安政の大獄が一八五八年ですよね。そのくらいじゃないでしょうか」
「ま、そういう種類の情報だ」
「了解しました」
安原は詳しい説明を受けてから直ぐに外へと向かった。
そして結衣と麻衣は慌てて着替えてから、直ぐさまにお昼を食べていた。
そんな中、法生とリンにジョンは昨夜のデータのチェックをしていた。
だがそのデータにはまるで大型動物のような寝息のような音が入っていたのである。
「なんの音だろうな……これがどのカメラにも入ってるって?」
「ええ」
「たっだいまー。お昼食べ終わったよー」
「交替し……って、なに!?なんの音!?」
双子たちに綾子と真砂子はベースに響く音に驚いて、思わず耳を塞いでしまう。
「わからん。昨夜のデータをチェックしてたら入ってた」
「恐竜の寝息みたいや……」
「うん……」
寝息のような音は大きく鋭い。
誰もが映像を食い入るように見ていた時であった。
その音より遥かに大きい音、火災報知器が鳴ったのである。
「……火災報知器の音!?」
「えっ……か、火事!?」
「どこだ!?」
法生は慌てて廊下へと出る。
すると麻衣が彼を直ぐに呼びつけた。
「ぼーさん!母屋が……」
窓から双子は見ていた。
母屋から煙が出ているのを。
「滝川さん!」
母屋へと向かえば、一室から酷い煙と炎が見えていた。
そして彰文が座布団を使ってなんとか火を消そうとしている。
「大丈夫か!?ばあさんたちは?」
「祖母は窓の方から父たちが。子供たちは外に出しました!」