第8章 呪いの家
「え?」
「デート中だったんでしょ?あたくしのことを誰かと間違えたみたいですもの。たしか『ナ……』」
「わーっ、わーっ!違うって!そんなんじゃないって、そうじゃなくて!ていうかデートしてないよ!?結衣もいたし!?」
そこで自分の名前を出してくれるな。
結衣はそう思いながら慌てる妹を見つめた。
「お二人共、何か手がかりがありまして?」
「へ」
「あ、夢のこと?」
「あ!夢!えと、奈央さんが洞窟を通ってたよ」
「何度も海から入り江に向かってね」
「再生の儀式……かな」
双子の言葉を聞いて、真砂子は真剣な表情に変わった。
「胎内めぐり……ですわね」
「胎内めぐり……?」
「神社やお寺にそういう場所がよくありますわ。暗いトンネルがあってそこをお母さんのお腹の中に見立てるんですの。トンネルを抜けて外に出るともう一度生まれたことになるんですわ」
真砂子の説明に双子は『へー……』と呟く。
今までそんなこと知らなかったので勉強になると、結衣はなるべく記憶しようとした。
「でもどうして奈央さんがそんなことを……転生の手続きですかしら」
「転生って生まれ変わりのこと?」
「ええ……よくわかりませんわね」
「……そういえば、ぼーさんたちは?」
ふと、結衣はベースに真砂子以外の人間が居ないことに気がついた。
リンもいないのだが、どこに行ったのだろうと辺りを見渡す。
「玄関ですわ。そろそろ……」
真砂子の声を合図にするかのように襖が開いた。
そして中に入ってきたのは、安原修である。
「「──安原さん!?」」
「あ、谷山さんたち。どうもー」
「あー、やっぱりあの時ぼーさんが電話してたの安原さんだったんだ!」
「いまついたの?大変だったでしょ」
「ほんっっとに大変でしたよ。なんたって沖縄から飛んできたんですから」
安原の後ろから法生が顔を覗かせたが、彼はなんともいえない表情で笑っていた。
「沖縄ぁ!?昨日の今日でよくついたねぇ。旅行してたの?」
「いえ、バイトです」
「沖縄でバイト?どんなバイトしてたんですか?」
「リゾートホテルのボーイを」
なんだか胡散臭いボーイだろうな。
双子はそう思いながら思わず笑ってしまう。