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ハツコイソウ【ゴーストハント/滝川法生】

第8章 呪いの家


麻衣はその差し出された手に自身の手を重ねる。
結衣はそれを見ながら、どうしようかと悩んでいるとナルは苦笑してから彼女の手を繋いだ。


「ナル……!?」

「ほら、いこう」


驚いた結衣の声にナルは微笑み、二人と手を繋いだまま歩き出した。


(何気に夢の中のナルはよく触れてくる……)


そう思いながら結衣は隣にいる麻衣を見た。
顔を真っ赤に染めながら、繋がれた手を見つめるその表情は恋する乙女のもの。


(可愛いけど……相手がナルってところが……)


どうしてもそこが許せない。
なんて思っていれば麻衣が恥ずかしさを紛らわせるためなのか、ナルに声をかけた。


「あ、あの……ナル?」

「ん?」

「前に『夢の方向を示した』って言ってたでしょ。今までもずっとそうだったの……?」


その問いにナルは微笑むだけ。
相変わらず綺麗な微笑みだと思っていた結衣は、周りの景色が霞んできているのに気づいた。

目が覚める。
そう思っていた時、名前を誰かに呼ばれたような気がした。


「結衣」


聞き覚えのある声である。
意識が徐々に浮上する感覚を覚えた時、その瞼が勢いよく開いた。


「起きましたわね、結衣」

「真砂子……」

「随分とぐっすとり眠られてましたわね。もう朝ですわよ」

「も、もう朝なんだ……」


言われてみれば辺りが明るい。


「次は麻衣ですわね。麻衣、麻衣」


真砂子は麻衣を何度が呼ぶ。
すると彼女の口から寝言が零れた。


「ナル……」


その言葉に真砂子は眉を寄せ、結衣はそっぽを向いて苦笑を浮かべた。


「麻衣!」


一際強く真砂子が名前を呼ぶと、麻衣の目が開いた。
怒ったような拗ねたような表情を浮かべる真砂子に、麻衣は驚いたのか声を上げた。


「──あ、あれっ。ここベース?」

「そうだよ。麻衣ったらベースで寝ちゃったんだよ。まあ、皆もベースで仮眠してたけど」

「そ、そうなんだ?え、もう朝?あたし寝ちゃってたんだ!?ご、ごめん……」


昨晩、というよりも深夜になった頃麻衣は眠りについてしまった。
そのままにしとこうという綾子の発言により、全員がベースで仮眠をとることになったのだ。


「起こさないほうがよかったみたいですわね」
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