第8章 呪いの家
すると、二人の傍を白い光が横切る。
それが来た場所へと視線を向ければ、洞窟の穴が見えた。
海に繋がる場所であった。
(……あれは)
海の方から人影が見えた。
その人影は奈央である。
「──な……奈央さん……?」
「なんで奈央さんが……?」
濡れそぼった服に濡れた髪の毛、俯いた顔。
奈央は彼女たちの声が聞こえていないのか、洞窟の中へと向かって歩いていく。
「待って奈央さん!」
「奈……」
奈央は上へと向かって飛んでいく。
他の白い光も同じように上へと飛んでいた。
「前に見た夢と同じだ……」
「うん。霊が上へ吹き上げられている……」
「……見て、結衣。祠が……」
麻衣の言葉に誘われるように結衣は祠を見る。
前回の夢同様に祠だけが歪んで見えていた。
「前と同じ……歪んでるね」
「うん……嫌な気配がする……」
「……え」
結衣が声を上げると、麻衣も同じように声を上げた。
海の方からまた奈央が歩いてきているのである。
「奈央さん……!?」
奈央はまた洞窟を出ていき上へと吹き上げられていく。
そしてまた海の方から洞窟に入ってきて、同じように吹き上げられていく。
「奈央さん……!?」
「……な……なんなの……なにしてるの?奈央さん!」
「……再生の儀式」
ナルの声が聞こえた。
二人は慌てて背後を見ると、そこには優しい笑みを浮かべたナルが立っている。
「ナル……!」
「ナル……」
「再生の儀式?」
「たぶん。暗い穴の中を通り抜けるのは、もう一度生まれ直すことを意味している。彼女は何度もああしてこの洞窟を通り抜けながら別のなにかに生まれ変わろうとしてるんだと思う」
「……別のなにか……」
別の何かというのは、なんだろうか。
結衣は繰り返し洞窟の中を通り、吹き上げられていく奈央を見ていた。
「この洞窟は魂を呼び寄せる。呼び寄せられた魂はああして儀式を繰り返す。そこまではわかるんだけど……」
「ふうん……えっ、ってことはあたしと結衣、いま魂なんじゃ」
「そうじゃん!?あたしと麻衣魂なんじゃ!?」
「そう。だからここへはあまり近寄らないほうがいい。……いこう」
ナルは双子へと手を差し出す。