第8章 呪いの家
(人懐っこい性格だが、それがあまり気分良くねぇな)
先程まで沈んだ表情をしていた。
いつもそんな彼女を慰めて元気を出させるのは自分の役目。
それなのにリンがその役目を果たしている。
法生は柔く微笑む結衣を見つめる。
彼女の微笑みに苛立ちを覚えてしまい、大人気ないと自分を叱責しながら瞼を閉ざした。
(……明日、おれにも微笑んでくれたら……それでいい)
もう一度瞼を開こうとした時だった。
「ぼーさんのブランケット、落ちてるや」
結衣の声が近くに聞こえて法生は驚いた。
悩んでいる最中にどうやら近くに来たようで、それに気づかなかった事に驚く。
そして思わず目を開けてしまった。
「あれ、ぼーさん起きた?」
「あ、ああ……」
「ごめん、起こした?ブランケット落ちてたからかけようとしたんだけど」
「そ、そっか。ありがとうな……」
歯切れが悪い返事に結衣は首を傾げる。
どうしたのだろうと思いながらも、少し睡魔が押し寄せてくるのを感じた。
この前もそうだった。
誰かと少し話したおかげで睡魔が来る。
「眠たそうじゃねぇか。少し寝たらどうだ?」
「うん……そうしようかな」
「ほら、ブランケット貸すから。ちょいと眠りなさい」
ブランケットを結衣の肩にかけてから、彼女の頭をぐしゃりと撫でる。
すると撫でられ事に結衣は嬉しげに微笑んで、その反応に法生は無意識に笑みを浮かべる。
「ありがとう、ぼーさん」
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重たい瞼を結衣はゆっくりと押し上げる。
そして自分は今、ベースにいるはずなのにと辺りを見渡した。
結衣がいた場所はあの洞窟だった。
「……夢見てるのかな、また」
きっとそうだ。
でなければ、自分は今ここにはいないはず。
そう思っていればいつの間にか隣に麻衣がいた。
「麻衣」
声をかけると、彼女の瞼が押し上げられた。
そして辺りを見渡してからその瞳が結衣をとらえる。
「結衣……あたしたち、また夢を見てるんだね」
「うん。じゃなきゃ、あたしたち揃ってなんで洞窟にいるんだろうって話になっちゃうからね」
「そうだね」
双子はクスリと笑い合う。