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ハツコイソウ【ゴーストハント/滝川法生】

第8章 呪いの家


「結衣さん。そろそろ寝られたらどうですか?」


深夜四時。
ベースでは、彼女はまた眠れずにただ無言でリンの近くに座っていた。
麻衣たちはベースで仮眠を取っているが、結衣だけは起きていた。

眠れない原因は彼女も分かっている。
犠牲者が出てしまったせいであり、奈央が誰かに殺されたという話を聞いたせいでもあった。


「うん……」


眠ろうとしない結衣をリンは無言で見つめる。


「……お茶をいれましょうか」

「え?」

「少し待っていてください」


リンはポットに元に近寄るとお茶を湯のみにいれる。
そして湯気が漂う湯のみを結衣へと差し出した。


「どうぞ」

「……ありがとう、リンさん」


何気に初めてリンにお茶を入れてもらったかもしれない。
結衣はそう思いながら小さく笑い、お茶を一口口に含んでゆっくりと嚥下した。


「初めてリンさんにお茶いれてもらったや」

「いれるというより、ポットに入ってるお茶をただ湯のみに入れただけですけどね」

「それでもなんだか嬉しいや」


先程までの沈んた表情が少し消えた結衣に、リンは息を小さく吐く。
ホッとしたようなそんな感覚がある。

結衣は表情豊かだ。
双子の妹の麻衣も同じだが、彼女以上に涙脆がったり傷つきやすい。
そしてよく笑ってよく怒る。


(最初は、気にしていなかった)


声をかけられてもどうでも良かった。
それが美山邸の時、微笑みかけられてから驚いた。
あんなに邪険にされたような言葉を言われたにも関わらず、結衣はリンに笑いかけた。


(……まどかでも最初は笑いかけなかったのに)


だから好印象は持った。
名前を呼ぶようになった。


「……リンさんと話してたらちょっと気分が上がったかも」

「それなら良かったです」


リンは柔く微笑んだ。
珍しい微笑みをまた見れたことに結衣は驚いたが、同じように微笑み返した。

それを面白くないと感じている男がいた。
法生は瞼を少し押し上げて、二人の様子を見ていた。


(仲良しだねぇ……)


あまり気分は良くない、面白くもない。
今は仕事中だからそういう心情は収めておきたいが、そうもいかなかった。
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