第8章 呪いの家
双子の言葉に法生は答えない。
「真砂子、なにか準備するものはあるか?」
「ねえ、なんでよ?だって奈央さん急にこんなことななっちゃって、もしかしたら家族に言いたいことがあるかもしれないじゃない!」
「奈央さんが事故で死んだとは限らない」
「……え?」
「事故じゃないって……」
法生の言葉に双子が固まる。
そんな双子に容赦なく法生は言葉を突きつけた。
「平たく言ってやろう。この家の誰かに殺された可能性がある」
「そんな……っ!」
「護符を配った時、すでに奈央さんはいなかった。あの時点で憑依されていたと思われる人間が三人はいる。事故や自殺とは限らない。もしも陽子さんが殺したんだとして──家族がそれを聞きたいと思うか?」
そうだ、その可能性がある。
結衣はそう思いながらも、そうじゃなければ良いのにと思っている所があった。
法生の言葉は正しい、いつだって正しいのだ。
だがその冷たい言葉が今は結衣にとっては辛く、今にも泣き出しそうな表情になる。
「そうでなきゃいいと、おれだって思うさ。だからそれを確かめるために真砂子に彼女を呼んでもらうんだ。家族は参加させない。了解?」
「……了解」
「……うん」
双子は揃って今にも泣きだしそう。
そんな彼女たちの頭を法生は撫でながら、短く息を吐き出すのだった。
ベースの隣の部屋でそれは行われた。
机に一本の蝋燭に線香を一本置いた暗い部屋で、真砂子は数珠を持って目を閉ざしている。
その場には双子と法生と綾子にジョンがいた。
「……奈央さん。そこにいますか」
法生が声をかけると、目を閉ざしていた真砂子がピクリと反応した。
「……はい……」
「吉見奈央さんですね?」
「……はい……。これは……なんですか」
真砂子の声だが真砂子ではない。
彼女は今、奈央に憑依されている形のであると誰もが認識出来た。
「あなたは亡くなりました。……分かりますか」
「──……はい」
「何故、亡くなったのか分かりますか?」
法生が淡々と聞く。
すると真砂子の瞳から涙が溢れてこぼれおちた。
「……海に……落ちました。茶室の……庭にいて……海を見ていて──突き落とされました……」