第8章 呪いの家
「どうしたんだろう……何か映ってる?」
「んー……」
「別に変わったものは映ってないと思うけど……」
「だよねぇ」
「暗くてよく見えないんだよねぇ」
結衣は画面を見つめる。
暗くてよく見えない洞窟の中だが、真っ黒な海が揺れているのが見えていた。
(……あれ?)
海に繋がる洞窟の入口に何か引っ掛かっているように見えた。
それが波に揺られて動いているのが見えたのである。
「ねえ……これ、何か引っかかってるよ」
「どれ?」
「ほら、ここ。波に揺られて動いてる……」
「なんです?」
結衣が画面を指さす。
そこを麻衣と綾子に彰文が凝視して見ると、確かに何かが波に動かれてユラユラと動いているのが見えた。
「あら、ホントだ」
「あ、ぼーさんたちだ。やっぱりこれに気がついて行ったんだ……」
画面には法生とリンとジョンが映る。
そして法生とリンが揺られているものを引き上げたのだが、それは『人』だった。
「──え?まさか……人……?」
「まさか……」
嫌な予感が押し寄せてくる。
その時、彰文が無言で勢いよく立ち上がってベースを出ていった。
「彰文さん!」
「……ウソでしょ……」
全員の中に嫌な予感が押し寄せる。
あれは奈央じゃないのか……そんな事を思ってしまうのだ。
『潮の関係で死体が流れてくるんです』
今何故か彰文の言葉が蘇ってくる。
結衣は顔を青ざめさせながら、思わず祈ってしまう。
(奈央さんじゃない……違う、違うよね。どうか……)
数十分後、法生たちが戻ってきた。
彼らが見つけたのはやはり奈央であり、彼女は直ぐに警察に連れていかれた。
(奈央さん……なんで……)
ベースは静寂に包まれている。
誰一人喋ることなく、結衣は居心地の悪さと息が詰まる感覚に眉を寄せて膝の間に顔を埋めた。
「……真砂子ちゃんや」
「はい?」
「奈央さんを降ろせるかい?リンは日が悪いって言うんでな。悪いがやってくれるか?」
「……やってみても、よろしゅうございますわ」
「……ね、ねぇ。それなら家族の誰かに知らせたほうがよくない?」
「だめだ」
麻衣の言葉を法生は直ぐさま却下した。
「な、なんで?」
「ぼーさん、なんで家族は呼んじゃダメなの?」