第8章 呪いの家
やっとナルが何故危険なのか三人は分かったような気がした。
気功法の達人ならば危険性があり、リンの言う通り縛っても監禁しても意味が無い。
「そういや食事の時、ナルもリンさんと同じメニューだったよね」
「肉類を食べないって言ってたよね……」
『渋谷さんと林さんは肉類を召し上がらないとお聞きしたので』
「あれってナルも精進潔斎するってことなんじゃない?」
「ありうるわね」
「そうか……ナルって気功法を」
ふと、麻衣が黙る。
どうしたのだろうかと結衣が顔を覗こうとした時、麻衣は勢いよく叫んだ。
「な、なに……!?」
「なっ、なによ急に」
「あたしとナルがマンホールの穴に落ちたことあったじゃない。ほらっ、タカの学校の調査の時!」
「湯浅高校?あったね、そんなこと」
「そう!あの時ね、穴の中って落ちた瓦礫でいっぱいだったんだよ?なのにたまたま落ちた場所に何も無かったの。それで大した怪我もしないで済んだんだけど、なんかヘンだと思ってたんだ」
「なんで?」
結衣は麻衣が言いたいことが分かった気がした。
湯浅の時に梯子が崩れてマンホールの穴に落ちたと聞いた、それはつまり瓦礫と一緒に落ちたということ。
それなのに麻衣とナルは瓦礫の上に落ちたりしていない。
「麻衣とナルは瓦礫と一緒に落ちたんだよね。それなのに瓦礫の上に落ちたわけじゃない。普通なら瓦礫と一緒のところに落ちるのに……って言いたいんだよね?」
「そう!結衣の言う通り!」
「……そっか。瓦礫がゴロゴロしてる場所に落ちて当然よね」
「でしょ。それがなかったってことは」
「誰かが砕くかのけるかしたか……──ん?でも気功法が使えるならあの狐みたいなのが飛び掛ってきたときなんで撃退しなかったの?」
「そういえば……なんでリンさんあの時止めたんだろう」
あの時、ナルは何かをしようとした。
気功法を使おうとしたのかもしれないが、それをリンは止めたのである。
「ねえ。気功法を使っちゃいけない理由でもあるのかしらねぇ……」
❈✴❈✴❈✴❈✴❈✴❈✴❈
十二時近く前。
ベースに彰文が訪ねてきた。
内容は姉の奈央がどこにも居ないということであった。
「奈央さんがいない?」