第8章 呪いの家
「九字はそもそも護身九字っていって、身を守るためのもんなのよねえ」
「えーっ、そうなんだ」
「あれって、つまり祈祷や修行をするときに悪霊なんかに邪魔されないようにするもんなの。それを最後に刀印で中央を払って気合いをかけると一種の攻撃にも使えるというわけ。気合いをかけてる時に気力を発射してるのよね」
「じゃ、除霊とかって気力を操ってなにかをしてるってこと?」
「そ。呪文や道具を使うのは気力を効率よく高めるためってわけ。なきゃ出来ないってもんでもないのよ」
「えー?んじゃ意味無くない?」
双子と綾子は食事を取りながら会話をしていた。
法生たちはベースにいて、彼女たちは寝泊まりしている部屋にいる。
食事が終わればベースの番は交代だ。
「っていうか……たとえば真言を間違えて覚えててもだからどうこうって問題じゃない──と、アタシなんかは思ってるけど。ホラ気功ってあるじゃない?中国の」
「手をかざしたりして病気を治したりするやつ?」
「あと離れた人を倒したするアレ?」
「あれなんかは気を操る功夫なのよ。アタシは儀式をとっぱらった気力かしらと思ってるんだけど」
「それはPKとは違うの?」
「あ、そうよね。病気の人を治すなんてPKーLTだし、遠くの人を倒すのはPKーSTか。じゃ、やっぱりPKって気力なんだ」
「よく分かんないわけ?」
「分かってることのほうが少ないの」
なんて会話をしながら双子は苦手な食べ物を綾子へと押し付ける。
それを綾子は眉を寄せて、『ちゃんと食べなさい』とまるで母親のように叱りながら戻した。
「アタシと気功法は詳しくないし、達人っていわれる人は本当に凄いらしいけどねぇ。触りもしないで岩は砕くし鉄は曲げるしガンは治すし。人を操ったりもできるらしいし。それこそ除霊したりもね」
「なんか、リンさんとかできそうだよね。中国出身だし」
「あー、結衣の言う通りできそーよねー」
こんなことリンに聞かれたら不機嫌になりそうかもしれない。
なんて思いながら双子と綾子は笑っていたが、ふとある人物を思い出して叫んだ。
「「「ナル!」」」
今、禁呪で眠りについているナル。
「ナルが気功法の達人ってのもアリだよね。そしたら縛っても意味ないし」
「閉じ込めたって駄目よね……そりゃ危険だわ。眠らせとくしかないわけよね」