第8章 呪いの家
「そんでナルに会えるってんで飛んできたわけね……って真砂子学校にはなに着ていってんの?」
「もちろん制服がございますわ。まさか、あたくしが着物で登校してるとでも?」
「まままままっさかぁ〜」
真砂子が制服。
そんな想像がでできない双子は苦笑を浮かべていた。
ふと結衣はこち側だと入り江が見えないことに気がついた、フェンスから身を乗り出そうとした。
「こら、危ねぇぞ」
「うー」
「ここから入り江はまったく見えないわけか」
「だねぇ」
「あちらの茶室の向こうへ行くと、雌鼻──岬の先までいけます。そこからなら」
彰文の案内で結衣たちは茶室のある場所へと向かう。
そこは双子が夢を見たまんまの光景が広がっていて、二人はやっぱりと思いながら立派な木組みされた建物を見た。
「うーわー……夢と同じだ」
「まんま一緒だあ」
「もう少しさきまで行ってみますか?」
彰文は岬へと行く道を塞ぐ扉を鍵を取り出して開けた。
「ここから先は柵がないので気をつけてくださいね」
言われた通り、扉の先は柵がなかった。
落ちてしまえば命はないだろうという高さであり、双子たちは恐る恐ると下を見る。
下は海だった。
高さはそこそこであり、波が崖に打たれている。
「上から見るとそんなに崖ってわけでもないんだな」
「ちょっと若旦那」
「若旦那……って、ぼくは別に家を継ぐわけでは」
「細かいことはいいから。あれなんなの?」
綾子が指さす方向には岩が五つあった。
「あれはぼくにも分かりません。祖母もなんだか知らないようです。墓石みたいなんで弄らないでおくんだと言ってました」
「墓石かあ……」
寂しいところにあるものだ。
結衣は何となくそう思いながら石を見てから息を吐く。
「吉見さん。あれはなんですか?」
ジョンが海の方向を見ながら彰文を呼ぶ。
彼が見ていた先には大きな岩と小さな岩があり、二つは注連縄で結ばれている。
「雄瘤と雌瘤です。大きいほうが雄瘤、小さい方が雌瘤になります」
「注連縄がかけてありますね」
「ええ。でもご神事とは関係ないんだと思うんですけど。あの注連縄も近郊の漁師さんがお正月にかけ直してるみたいので。あれはね、ここから海に飛び込んだ男の人と女の人がああなったんだって言われてるんです」