第8章 呪いの家
「他には?」
「店のほうで幽霊を見たという従業員が何人か。窓から部屋の中を覗いていたとか……」
「それは場所が決まっていますか?」
「いえ……でも多分入り江側の部屋だと思います。外から人が覗いてそれが不思議な場所というと、そちら側しかないので」
「……わかりました。とりあえず機材をおいて様子を見ます。部屋はご用意いただけたでしょうか」
「ご案内します」
彰文さんの案内で、あたし達は長い長い廊下を歩いた。
やがて真っ直ぐな廊下を出てから、一つの部屋に案内される。
「うわーっ!」
「ひろーい!!」
案内された部屋はとても広い和室。
入ってすぐが六畳の部屋になっていて、その左に十畳の大きな座敷があった。
玄関とは壁を隔てて隣に当たる位置にはもう一つ八畳の部屋。
「すっごーい!」
「ひっろーい!こんな広い和室初めて見たー!」
「ベースにするのもったいなーい!」
あたし達双子は大はしゃぎ。
「あっ、こっちも広い!」
「すごいすごい!」
「ここと両隣の部屋を用意しましたので、お休みになるときはそちらをお使いください」
「ありがとうございます」
あたしと麻衣ははしゃぎながら窓の外を見て驚愕した。
「うひゃっ!」
「うわぁっ!」
窓の外は断崖絶壁だ。
落ちたら命はまず無いだろうという高さでもあり、すぐに海が見えている。
入り江の部屋というのはここのことか。
なんて思いながら外を覗いていると、ぼーさんが隣に立ってあたしたちと同じように外を覗く。
「これが入り江側の部屋なわけだ」
「確かにこっから覗くっつったらユーレーだよね」
「まず人間じゃ無理だよ、こんな所から覗くなんて」
「お分かりになったでしょう?」
彰文さんは苦笑を浮かべながら、あたし達を見てくる。
「はあ、よく分かりました」
「下がすぐ海ですもんねぇ。ここから覗けるのは幽霊しかいない」
あたしは自分の言葉に頷きながら、また断崖絶壁の外を眺める。
「あ、ここ泳げます?」
ちょうど夏。
麻衣はだからこそ聞いてみたのだろう。
「泳ぎが得意でしたら。すごく深いですよ。泳ぐなら反対側の海岸があります」
「反対側……っていうと」
「ああ、そうか。じゃあ……右手でこの形を作ってみてください」