第8章 呪いの家
「吉見やえと申します。本来ならわたくしがお願いにあがらねばならない所を、ご覧の通りの有様でして孫を代理にやりました。なにとぞよろしくお願いいたします」
おばあさんの布団の横であたし達は正座をする。
途中彰文さんが『足を崩していいですよ』と言ってくれたが、どうにもそうは出来なかった。
「失礼します」
障子が開き、ふくよかな体格の男性と細身の女性が廊下に座ってこちらに頭を下げた。
そんな彼らの元に彰文さんが近寄る。
「よく、おいでくださいました」
「父の泰造と母の裕恵です」
「どうぞ」
裕恵さんがあたし達の足元にお茶を置く。
「あ、どうも」
「ありがとうございます……」
何だかとても緊張する。
こんな手厚くもてなされるのは初めてのことだから慣れないのだ。
(お茶をこうして出されるの初めてだよ……!)
なんて思っていると、ナルがおばあさんに話しかけた。
「ご依頼の内容をもう一度おばあさんから伺いたいのですが」
「はい。……なにからお話したらいいのか……馬鹿な、とお思いでしょうが、この家は呪われてるんでございます。吉見の家には気味の悪い言い伝えがございます。代替わりの時に必ず変事が起こるというのです」
まるで小説や映画で聞くような出だしだった。
だが既に怖さがあって息を飲んでしまう。
「実際に先代──わたくしの父が亡くなった時家族からばたばたと死人が出ました。先代が先々代から家を譲られた時にも同じことがございました。その時の事はわたくしも小さくて、もう覚えておりません。ただ、六人おりました兄弟の中でわたくし一人が生き残ったのでございます」
足の痺れなど何処かに行ってしまう内容だった。
「そして先日、わたくしの連れ合いが亡くなりまして。すぐ葉月にあの湿疹が出来始めまして、一週間もしないうちにあんな風になってしまいました。背中の戒名といい、まるで葉月の首を切ってやると言ってるようで」
あたしと麻衣は思わず首を触る。
確かにあの首の湿疹は、まるで葉月ちゃんの首を今にも切り落とすぞと言わんばかりのようだった。
「……先代さんが亡くなった時の話を伺いたいのですが。いつ頃のことですか?」
「今から三十二年前まえでございます」