第8章 呪いの家
ぼーさんとあたしが非難地味た言葉を言えば、ナルは仕方なさそうに溜息を吐き出す。
「……わかりました」
「すみません。まず、これを見ていただきたいんですが……」
彰文さんは葉月ちゃんの首にある包帯を取った。
彼女の首は赤く爛れていて、酷く痛そうに見えて思わず眉を寄せてしまう。
「これが首全体にあるんです」
「よくある皮膚病のように見えますが」
「それが、少しも痛くも痒くもないらしんです。これだけなら病院に連れて行ったんですが……」
彰文さんは葉月ちゃんの背中を見せてきた。
ワンピースをずらして白い肌が見えたのだが、そこにある物に息を飲んでしまう。
喘月院落獄童女
爛れたようにそう文字があったのだ。
「……な」
「なに……これ。なんて書いてあるの?」
「……『喘月院落獄童女』」
硬い声でぼーさんが答える。
「ぼーさん」
「……こりゃ、戒名だ」
「戒名……って」
「それ、亡くなった人に付ける名前でしょ!?」
「ああ。『喘月』てえのは何かを恐れるのが馬鹿くらい度を越していることだ。『落獄』は地獄に落ちるって意味だろう。『童女』は女の子につける。喘月の『月』は『葉月』から取ったんだろう。誰かが悪意でも持ってこの子に付けた戒名だ。『この馬鹿な子供は地獄に落ちるだろう』ってさ」
息を再度飲んだ。
悪意を持って少女の背中に付けられた戒名。
そして地獄に落ちるだろうという意味の戒名。
(地獄に落ちる……)
これが依頼を引き受ける始まりの出来事だった。
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あたし達は依頼を引き受け、依頼主の家がある能登に到着したのは依頼を引き受けた三日後だった。
勿論メンバーは相変わらずのナルとリンさんとあたしと麻衣、そしてぼーさんと綾子である。
長い道のりだった。
二台の車で連なって日本列島を横断したのだから。
運転していたぼーさんとリンさんは大変だったろう。
「海の近くだあ……」
吉見家がある場所は日本海を望む岬の上にあった。
封勢のある松林を抜ければ広々とした海岸を背景に大きな日本建築がある。
吉見家は料亭の建物であったのだ。
吉見家に辿り着けば、彰文さんがすぐに出迎えてくれて母屋まで案内してくれた。
案内された場所はとある部屋であり、そこではおばあさんが布団の上に身を起こしていた。