第8章 呪いの家
ぼーさんはアイスコーヒー、綾子は紅茶。
二人の飲み物を淹れていると、綾子が『そういえば』と声をかけてくる。
「ナルとリンは?」
「リンさんは機材室。ナルは旅行中だよ〜」
あたしはそう答えながら、リンさんはお茶要らないのかなと思いながらも二人の分の飲み物を運ぶ。
そして麻衣はお土産と綾子に渡されたケーキを運んだ。
「えーっ?ナルってばまた旅行!?」
「うん。今日帰ってくるって言ってたけどね。意外に旅行好きだよねー、ナルって。しょっちゅう出掛けるもんね」
「まさか観光目的じゃないでしょ?」
「実は温泉好きで秘湯探索とかだったりしてな」
ぼーさんの言葉で、ナルが温泉を探している想像をする。
だが想像力が拒否反応をしてきて、想像なんて出来なかった。
「……い、イカン。想像力が拒否反応を」
「ナルが秘湯探索なんてするわけないような……分かんないな……」
「何にしても、結構なご身分よねえ」
なんて話していると、あたしのデスクにある電話が鳴る。
「お、電話だぞ」
「あーいいの、いいの。留守電になるから」
「「は?」」
あたしの言葉にぼーさんと綾子が不思議そうにする。
そんな彼らに麻衣が椅子に座りながら言った。
「だって電話に出ちゃ駄目って言われてるんだもん」
「郵便物も触っちゃ駄目だって。リンさんがチェックしてから〜」
「バイトってそーゆー雑用の為にいるんじゃないの?あんた達、ここで何やってんのよ」
「調査員だよ」
「あと、接客とお茶いれたり掃除したり……あ、でも所長室は掃除したことないなあ。立ち入り禁止だから」
今考えれば不思議なバイトである。
最初バイトに来た時にそう言われて、あたしたちもだいぶ驚いたのを思い出した。
「そんなヌルい仕事で給料どれくらいもらってるわけ?」
「調査のある月とない月で違うけど、あたしも結衣も平均で安いOLぐらい貰ってるよ」
麻衣の言葉に綾子とぼーさんが驚愕する。
そりゃ驚くだろうなと、あたし達は頷いてしまう。
「じょーだんでしょ!?渋谷なんて一等地にこのオフィス、家賃いくらだと思う?それでバイト代が二人揃ってOLの給料なみ!?」
勿論、あたしと麻衣だって給料を知らされた時は驚いたものだ。