第7章 血ぬられた迷宮
「おっどろいたな。嬢ちゃんたち結構優秀なんじゃねぇか?過去視に透視に幽体離脱ときた。二人揃ってどんどん芸が増えるなあ」
「芸……」
「……お、芸といえば。リンさんや、さっきのありゃなんだ?」
ぼーさんは何かを思い出したようで、リンさんに声をかけながらあたしの頭の上に腕を置いてくる。
「……さっきの?」
「結衣と麻衣達を助ける時になんか投げるかどうかしたろ?」
「ああ……わたしの式です」
「しき?ってなに」
「中国の道士には妖怪や霊を捕らえて自分の支配下に置くことが出来る連中がいるわけ。それを役鬼とか使鬼つってな。使役される霊を式という──これであってるかい?」
「……間違ってはないようです」
「わあ……かっこいい〜!」
思わず漏れた言葉にリンさんが小さく微笑む。
珍しい表情が見れて、思わず『カメラがあれば……』と思ってしまった。
「──明るくなってきたな。そろそろ中に戻っても大丈夫だろう」
ナルの言葉通り、空は茜色に染まっている。
太陽が登り始めて明るくなってきていることに、安堵の息を吐き出した。
「……無事でよかった」
みんな、無事である。
その事に安堵していると、ぼーさんがあたしの頭を撫でた。
「良かったな、ほんと……みんな無事で」
「うん」
そんな時、立ち上がったナルの服から何かが落ちたのが見えた。
「あ、ナル。なにか落としたわよ」
ナルがなにか落としたのに気がついたのは綾子も一緒で、彼女はナルが落としたものを拾う。
「……櫛?」
綾子の手にあるのは艶やかな模様の櫛。
なんでそんな物ナルが持っているんだと思っていれば、真砂子が『あら』と声を漏らす。
「これ、あたくしのですわ。手提げに入れて部屋においてあったはずですのに……」
その言葉に麻衣が目を見開かせ、あたしやぼーさん達は『あらあら』と目を丸くさせた。
「……な、なーんでナルがもってるのかなあ?」
麻衣が震える声で聞けば、ナルは黙秘という名のシカトをして歩き出した。
「やあねえ、照れちゃって♡」
「そんなに心配だったのねぇ」
「いい話ですねぇ」
ぼーさんと森さんと安原さんの言葉に、麻衣の青筋が浮かぶ。
そんな妹にあたしは笑いをなんとか堪えていた。