第7章 血ぬられた迷宮
そこからはあまり覚えていない。
とにかく走って走って、浦戸からあのタイル張りの部屋から離れるために走った。
どのぐらい走っただろう。
息も切れ始めた時、ナルが叫んだ。
「そこの窓から外にでろ!とにかく家の中から出るんだ!」
ナルの指さす方向には窓が一つ。
あたし達はその窓から外に出ると、外はまだ暗くて太陽も登っていない時間帯だった。
全員がその場に崩れ落ちる。
ぼーさんなんて寝転がっていて、あたしはその横で息切れを起こしながら、とにかく息を吐き出す。
「……ったく、おまえらは〜〜。二人だけで……行動すんなって……」
「ご、ごめん……」
「……まあ、おかげで見つかったけどな。失踪した連中」
「え?」
「二階の部屋に積み上げられてた。モノみたいにさ。……喉が痛そうだった。そのうえ手前の部屋に凄い数の骨があってな。……犠牲者のだと思うが、血を抜いたあと焼却炉で火葬したんだろうな。丁寧に並べてあった」
あたしは思わず自分の喉に手を当てる。
夢の中で体験した、首を切られる体験……あんなことを沢山されて来た人達がいたのだと思うと身体が震えた。
「おそらく……宏幸氏はあれを隠したかったんだろう。とても一人で処分できる量じゃなかった」
「……そんなにたくさんの人が……かわいそう……」
「……痛かっただろうね……苦しかっただろうね」
じわりと目元に涙が浮かぶ。
そんな時、背中を名前を呼ばれながら小さく突かれた。
「──結衣、麻衣」
「真砂子……」
「どうしたの……?」
「ありがとう、助けてくれて。昨夜も」
「「昨夜?」」
昨夜、あたし達はなにかしただろうか。
麻衣と顔を見合せてから首を傾げていると、真砂子が小さく笑う。
「来てくれたでしょう?」
そう言いながら真砂子は手のひらを見せてくる。
そこには二つの鍵があり、あたしと麻衣は思わず叫んだ。
「「えええーーっっ!?」」
あたし双子の叫び声に周りが驚いた顔をする。
そんな彼らにあたしは鍵を見せながら説明をした。
「あたしと麻衣、てっきり夢だって思ってたんだよ!?でも本当に鍵が無くなってるの!ほら!」
「このキーホルダーについてたの!!」