第7章 血ぬられた迷宮
「結衣、真砂子!」
腕を引っ張られて、あたしはなんとか立ち上がって真砂子を立たせる。
その時麻衣が何かに引っ張られるように壁に当たり、あたしと真砂子は転んでしまった。
「っう……」
痛みに唸る。
そして目を開けると、麻衣が壁に張り付いていた。
いや、両腕を誰に捕まれ壁に抑え込まれているのだ。
「麻衣!」
立ち上がり、麻衣を助けようと指を組んだ時である。
あたしは勢いよく誰かに引っ張られて麻衣と同じように壁に抑え込まれた。
「っ……!?」
誰かに両腕を掴まれている。
その掴んでいる手は、すぐに夢の中であたしをこの部屋に連れていった男たちの手だと気付く。
(こうやって、殺されたんだ……。とっくに死んでる奴の執念なんかのために!!)
麻衣だけでも助けなければ。
あたしは抑えられた腕をなんとか上げて、小さく指を組む。
「──ナウマク サンマンダ……」
その時だった。
濡れた足音が聞こえてきて、真言を唱える口が閉ざしてしまう。
ゆっくりと、ゆっくりと足音が近付いてきている。
すぐそこに浦戸がいる……。
思わず目を閉ざした。
その時、横で誰かの吐き出す息の音が聞こえた。
ゆっくりとその音を辿るように振り向いた時、麻衣の目の前に浦戸がいた。
「キャアアアッ!!」
「──麻衣!?」
ぼーさんの声が聞こえた。
そしてあたしは慌てて九字を切る。
「臨 兵 闘 者 皆 陣 烈 在 前!麻衣から離れろ!!」
浦戸の身体が傾いたが、九字は効いてなかった。
浦戸はニヤリと笑いながらあたしに近寄ってきたのである。
「あ…………いや、いやあああ!!くるな、くるなー!!」
「浦戸……!」
ぼーさんが金色の法具を構えたが、それより先にリンさんが指笛を吹いた。
高い鋭利な音と共になにか白いものが飛んできて、浦戸の身体を突き破る。
すると浦戸が消えたのと同時に、あたしと麻衣を拘束していた手も消えた。
「無事か!?」
「ぼーさん……」
座り込むあたしをぼーさんが立たせる。
そしてすぐに麻衣や真砂子も立ち上がり、あたし達は入口へと駆け寄る。
「すぐにここを離れましょう。浦戸は滅びていない。少し驚かせただけです」