第7章 血ぬられた迷宮
何がついたんだろうか。
そう思った時、か細い声が聞こえてきた。
「……結衣、麻衣……?」
「真砂子!?」
「真砂子!」
声がした方に懐中電灯を向けると、そこには安堵したような表情の真砂子がいた。
慌ててあたし達は真砂子の元に駆け寄る。
「よかった……」
「怪我はない?大丈夫?」
「……ええ。……ほんとに来てくれたのね、二人とも」
嬉しげに安堵したように言葉にする真砂子。
そんな彼女に微笑んでみせると、彼女は驚いたようあたしと麻衣の腕を見た。
「……結衣、麻衣。怪我をしましたの?」
「え?」
「怪我?」
「血が……」
あたしと麻衣はすぐに自分の腕を見る。
そこにはベットリと血が付着していて、さっき台に腕を着いた時に付着したんだと気付いた。
まさか……。
そう思い、台があった場所へと懐中電灯を向けて息を飲んだ。
「きゃ……」
手術代がそこにはあった。
しかも血まみれであり、床へと滴り落ちている。
「まさか……これ、全部血……?」
なにか水が揺れる音が聞こえた。
慌ててそちらへと懐中電灯を向けると、そこには浴槽が一つ。
並々にそこには血が入れられていた。
「っ……」
今気づいた。
この部屋は血生臭い、とても鼻が辛くなるぐらいの気持ち悪くなるぐらいの血の臭いで充満していると。
浴槽の血が揺れた。
その音に身体を跳ねさせていれば、ゆっくりと浴槽の中から頭が出てくる。
そして目が出てきたかと思えば、その瞳は笑ったように歪む。
「いや……!」
真砂子があたしの服にしがみつく。
そしてあたしは麻衣の手を思わず掴んでしまった。
静かに裸の上半身が見えた。
やせ細った肋などが見えている血まみれの体の男が、浴槽から立ち上がったのだ。
「浦戸……!!」
ニヤリと血まみれの顔で笑う浦戸に背筋が凍る。
「あの血、失踪した人たちの……?」
恐怖が迫り来る。
震えながらも真砂子を庇うように抱きしめていれば、麻衣が立ち上がった。
「──ナウマク サンマンダ バザラダンカン ナウマク
サンマンダ バザラダンカン。ナウマク サンマンダ バザラダンカン。臨 兵 闘 者 皆 陣 烈 在 前!」
麻衣が真言を言い、九字を切った時浦戸の体がよろけて浴槽に沈んだ。