第7章 血ぬられた迷宮
ぼーさん達はほとんど徹夜状態。
そして作業をずっと続けているせいで、相当疲れが溜まっているはず。
苛立ちが募ってきてもおかしくはない。
疲れてくるけど、それよりも不安が大きい。
あたしが項垂れていると、ぼーさんが手を引っ張ってきた。
「ぼーさん?」
「少し休んどけ。顔色が悪ぃ」
「でも……」
「だいじょーぶ。ちょっとぐらい休んだ方がいいし、倒れちまったらそれそこ真砂子を見つけらねぇだろ。ちょっとだけでもいいから休んでろ」
「……うん」
ぼーさんは麻衣の隣にあたしを座らせると、すぐに作業へと移っていく。
それを眺めていると麻衣があたしの手を握ってきた。
「麻衣……」
「ごめん、ちょっとだけ。暫く手、繋いでいい?」
「いいよ。あたしも、手繋ぎたいもん……」
小さい頃から、不安な時はこうしていた。
おとーさんが死んだ時も、おかーさんが死んだ時もずっと麻衣と手を繋いできた。
「……疲れた?」
綾子がこちらにやって来て、麻衣の隣に座る。
「ごめんねぇ。ゴタゴタしちゃって」
「え、ううん」
「綾子が謝る必要ないよ……」
「二人とも少しウトウトすれば?ついていてあげるから」
「え?」
「でも」
「情報収集になるかもしれないじゃない。真砂子が無事か二人で確かめてよ」
綾子の言葉にあたしと麻衣は顔を見合せた。
そして『頑張る』と告げてから二人で目を閉ざしてみる。
(自分の力が、思い通りに使えればいいのに……)
そう思いながら麻衣と手を繋いだまま、膝を抱え込んで額を膝に当てる。
寝れるかなと思ったが、思った以上にあたしは眠気があったようですぐに意識が薄れてきた。
(真砂子……)
ふと、意識が浮上する。
辺りを見渡せば、隣には麻衣がいてあたしたちは手を繋いでいた。
「周りの色彩が反転してる……」
「ってことは、いつもの夢なんじゃないかな」
「……見て結衣」
手を強く握られて、麻衣が指さす。
その方向を見ると建物の中をあたし達は浮いているようになっているのだが、その中に鬼火が大量に浮かんでいたのだ。
数え切れない量。
それだけこの数だけこの家で殺された霊がいるということだ。
「……なんて数」
息を飲んだ時、麻衣が『あ……』と声を漏らした。