第7章 血ぬられた迷宮
あたしと麻衣は手を握った。
いつも不安な時は手を繋いでから、お互いの体温で落ち着かせようとしていた。
「真砂子……誰でもいいから守って」
「神様でもいいから……誰か真砂子を守って……」
二人で祈りながら、ぼーさんたちと共に空白部分がある場所へと向かった。
レーダーで壁の厚さを確認する。
そして壊せそうなら壊していくが、頑丈でなかなか穴があかない。
そしたら次の壁の薄いところを探して……と繰り返していた。
「……まずいな。半日すぎちまった。おい、次は?」
「今調べてる」
「場所はあってるんだろうな?」
「測量結果が間違っていなければ、この周辺の部屋が隠しているのは例のX階だ。ただ、破れそうな壁がない。だから探しているんだ」
「X階……一階の下にもう一階あるってやつですね」
なかなか見つからないせいか、皆焦りが徐々に見え始める。
そんな光景を見ながらあたしは息が詰まるような感覚を覚えはじめ、不安と焦りで苦しくなってきた。
「ねえ。いちいち調べるより手当り次第壊した方が早いんじゃない?」
「最終的にはこっちのほうが早い」
息苦しい。
そう思いながら深く深く息を吐き出していれば、頭を誰かに撫でられた。
誰だろうと俯かせていた頭をあげると、ぼーさんがあたしの顔を覗き込んでいる。
「顔色が悪ぃな。大丈夫か?」
「うん……」
「ったく……だいたいお前は帰るっつってんのに、なんで風呂なんか入るんだよ」
「ちょっ!そのことは謝ったじゃない!」
「緊張感がたりねぇんだよ!」
まさかのこんな時にぼーさんと綾子が言い争いを始めた。
その事に驚いて、思わずぼーさんの服を引っ張るとそれまで静かに作業をしていた森さんが声を発した。
「……あら、あらあら。お二人共に落ち着いて。焦るのは分かるけど言い争っても始まらないわよ。それより一刻もはやく原さんを見つけること考えましょ。ね?」
森さんはやはり強い。
そう思いながらぼーさんの服を何度か引っ張ると、彼は気まずそうにあたしを見下ろしてくる。
「ぼーさん、綾子……」
思ったよりも泣き出しそうな声が出てしまった。
すると、ぼーさんと綾子が交互にあたしの頭を撫でる。
「……悪かったよ、イライラしちまって」
「ア……アタシも悪かったわ」